第12帖 須磨 / 第14場面
心尽くしの秋風
あらすじ・人物・読み方
須磨の秋。嵐の夜に源氏は琴を弾き「恋ひわびて」の歌を口ずさむ。供の人々も涙する。
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現代語で読む
須磨では、ますます心を尽くす秋風に、海は少し遠いけれど、行平中納言が「関吹き越ゆる」と言った浦波が、夜ごとに本当にたいそう近く聞こえて、またとないほどしみじみするものは、このような所の秋であった。
御前にたいそう人が少なく、皆が休んでいるなかで、独り目を覚まして、枕をそばだてて四方の嵐をお聞きになると、波がただここ元に立ち来る心地がして、涙が落ちるとも分からないうちに、枕が浮くほどになってしまった。琴を少し掻き鳴らしなさったのが、自分ながらたいそう凄く聞こえるので、弾くのをお止めになって、恋いわびて泣く音に紛れる浦波は、思う方から風が吹くのでしょうか。
とお歌いになると、人々は目を覚まして、素晴らしいと思われるにつけ、堪えきれず、むやみに起き座りながら、鼻を静かにかみ通す。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第12冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。