第14帖 澪標 / 第6場面
明石の姫君
あらすじ・人物・読み方
乳母は明石に着き、類なく美しい姫君に対面する。子持ちの君は源氏の心づかいに慰められて床を離れ、返歌を使いに託す。
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現代語で読む
入道は〔乳母を〕待ち受けて、喜び恐縮し申し上げることは限りない。都の方に向かって拝み申し上げて、有り難い〔源氏の〕お心遣いを思うと、ますます有り難く、恐ろしいほどに思う。
稚児〔姫君〕がたいそう恐れ多いほど美しくていらっしゃることは、比べるものがない。「本当に、尊い御心で、大切にお育て申し上げようとお思いになったのは、もっともなことだった」と拝見すると、卑しい道に出立して、夢のような心地がしていた嘆きも覚めてしまった。たいそう美しく可愛らしく思われて、お世話し申し上げる。
子持ちの君〔明石の君〕も、幾月もの間物思いに沈んでばかりいて、ますます弱った心地で、生きているとも思えなかったのが、この御手配によって、少し物思いが慰められると、頭を持ち上げて、お使いにもまたとないほどの心遣いを尽くす。〔使いが〕早く帰参しようと急いで苦しがるので、思うことどもを少し申し上げ続けて、
わたし一人で姫君をお世話するには行き届きませんので、覆うほどの大きなご加護を期待しております。
と申し上げた。〔その姫君のことが〕不思議なほど御心にかかって、見たいとお思いになる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第14冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。