源氏物語 第14帖
澪標 みをつくし
あらすじ
須磨・明石の流寓から帰京した源氏は、神無月の御八講を催し、冷泉帝の即位とともに内大臣へと進む。明石の君のもとに生まれた姫君への思いは募り、乳母を遣わして都へ迎える備えを進める一方、二条院の造営、住吉詣、難波の御祓と、折々に文と歌の贈答を重ねる。六条御息所の死と斎宮の帰京を経て、源氏は斎宮を養女に迎え、入内への道を開いていく。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面帰京と御八講夢に立った院の帝の御ことを源氏は忘れかね、神無月に御八講を催して孝養を尽くす。弘徽殿大后の御病も重く、宮中の空気は代替わりへと傾いていく。第2場面尚侍の君の嘆き尚侍の君は帝の御譲位の近づく宮仕えの行く末と、一門の衰えに不安を訴える。源氏は慰めの言葉をかけながらも、定まらぬ仲の行末を思う。第3場面冷泉帝の即位如月に春宮が元服し、朱雀帝は譲位して冷泉帝が即位する。源氏は内大臣に進み、政務の中心に立って栄華を極めていく。第4場面二条院の造営と姫君の誕生明石からは明石の君が女君を出産した報せが届き、宿曜の勘文は姫君に帝の母となる運命を示していた。源氏は姫君を迎えるべく、二条院に東の宮を造営させる。第5場面姫君の乳母源氏は故院に仕えた宣旨の娘を姫君の乳母に選び、忍んでその荒れた家を訪ねて歌を交わす。乳母は源氏の文を携え、津の国まで舟で明石へと下る。
場面 第6–10場面
第6場面明石の姫君乳母は明石に着き、類なく美しい姫君に対面する。子持ちの君は源氏の心づかいに慰められて床を離れ、返歌を使いに託す。第7場面三条の宮の藤壺源氏は三条の宮の藤壺のもとを訪れる。亡き院の葬送の煙を思い出して交わす歌に、藤壺の応えはなお冷たく、源氏の思いは募るばかりである。第8場面入道の文と五十日の祝い姫君の五十日を迎え、源氏は明石へ使いを遣わす。入道と明石の君の文と歌が届き、源氏は二日かけてその文を読み、心を慰める。第9場面紫の上の嫉妬明石の君の文を垣間見た紫の上は思いを漏らして嫉妬を見せる。源氏は封だけを見せ、行く末の約束を語って慰める。第10場面五月雨の花散里五月雨の頃、源氏は花散里のもとを訪れる。水鶏の声に寄せた歌の贈答が、しめやかに続く訪問を飾る。
場面 第11–15場面
第11場面東の院と変わる宮中源氏は五節の君をなお忘れかね、東の院の造営を進める。朱雀院は入道后の宮の崩御を機に御出家を遂げ、兵部卿宮と弘徽殿の勢いなど、宮中のありさまも移り変わる。第12場面住吉詣秋、源氏は人々の見送りを受けて住吉へ参詣する。明石の君の一行も近くに参籠していたが、対面は果たされず、並び立つ市女笠の列に源氏一行は見とれる。第13場面難波の御祓とみをつくしの歌帰途、源氏は惟光と住吉の松に歌を交わし、難波で御祓に臨んで明石の君へ「みをつくし」の歌を贈る。田蓑の島では昔の流浪を思い、述懐の歌を詠む。第14場面明石の君への誘い源氏は明石の君の上京を誘う文を使者に託す。入道は喜びながらもなお時節を待ち、娘の決意もすぐには定まらない。第15場面斎宮の帰京と御息所の死新しい斎宮が決まり、御息所は斎宮とともに帰京する。病の床に就いた御息所を源氏は見舞うが、祭の直後に御息所は入道の姿のまま亡くなる。
場面 第16–16場面
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第14冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。