第7帖 紅葉賀 / 第3場面
朱雀院の行幸
あらすじ・人物・読み方
十月十日過ぎ、紅葉の蔭で青海波が舞われ、散る紅葉に替えて菊が挿頭に差し替えられます。その夜、源氏は正三位に、頭中将は正四位下に進みます。
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現代語で読む
行幸には、親王たちをはじめ、残る人なく皆お供なさった。春宮もお出ましである。例によって楽の舟々が漕ぎ巡り、唐楽・高麗楽と、舞の種類も多かった。楽の音も鼓の音も、あたりに響き渡る。
先日の源氏の夕映えのお姿を〔帝が〕不吉にお思いになり、御誦経などを方々におさせになるのを、聞く人ももっともだと感嘆するのに、春宮の女御〔弘徽殿〕は大げさだと憎んでおっしゃる。
垣代などには、殿上人も地下の者も、心構えが格別と評判の有職の人々だけを〔帝は〕お揃えになった。宰相二人が、左衛門督・右衛門督と、左楽・右楽の指揮を執る。舞の師匠たちは世に並ぶ者のない人々を集め、それぞれ籠もって稽古したのであった。
木高い紅葉の蔭で、四十人の垣代が言い表しようもなく吹き鳴らす笛の音に松風が響き合い、本当の深山颪かと聞こえて吹き乱れ、色々に散り交う木の葉の中から、青海波が光り輝いて舞い出る様子は、恐ろしいほどに見える。挿頭の紅葉がひどく散って薄くなり、顔の匂い立つ美しさに圧された心地がするので、御前の菊を折って左大将が差し替えなさる。
日が暮れかかる頃、ほんの少し時雨が降り、空の様子までも趣を知る顔に、その素晴らしいお姿に、色々と移ろう菊の中でも言いようのないものを挿して、今日またとない技を尽くした入綾の舞は、ぞっと寒気がするほどで、この世の事とも思えない。何も分かるはずのない下人たちで、木のもとや岩陰、山の木の葉に埋もれている者までも、少しでも物の心を知る者は涙を落とした。
承香殿の女御の第四皇子が、まだ童姿で秋風楽をお舞いになったのが、これに次ぐ見物であった。これらに面白さが尽きてしまったので、ほかの事には目も移らず、かえって興醒めであったろうか。その夜、源氏中将は正三位になられた。頭中将は正四位下に位階が進んだ。上達部の人々が皆相応に喜びなさるのも、この君の昇進に引かれてのことなので、人の目を驚かし心を喜ばせなさる〔源氏の〕前世が知りたいほどである。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第7冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。