源氏物語 第7帖
紅葉賀 もみじのが
あらすじ
試楽で源氏が青海波を舞い人々を涙させた季節、藤壺のお腹では源氏の子が静かに育っていました。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面御前の試楽、青海波朱雀院の行幸を控え、懐妊中の藤壺が見られない代わりに、帝は御前で試楽を催させます。源氏が頭中将と青海波を舞うと、帝も上達部も涙し、弘徽殿女御だけが皮肉を放ちます。第2場面試楽の翌朝、文の贈答宿直だった藤壺に、源氏は舞の心を歌に託して文を送ります。思いがけず唐人の故事を引いた返歌が届き、源氏は后の言葉を繰り返し眺めてほほ笑みます。第3場面朱雀院の行幸十月十日過ぎ、紅葉の蔭で青海波が舞われ、散る紅葉に替えて菊が挿頭に差し替えられます。その夜、源氏は正三位に、頭中将は正四位下に進みます。第4場面葵の上の隔てと紫の君退出した藤壺を窺う源氏に、葵の上は紫の君の噂を聞いて心を閉ざします。一方、二条院の紫の君は無心に源氏にまつわり、母のない子を抱えたような源氏の心を慰めます。第5場面三条の宮の見舞い源氏は藤壺の里邸・三条の宮を訪ねますが、女房越しの他人行儀な応対しか得られません。兵部卿宮と物語するうちに日は暮れ、疎まれる辛さだけが残ります。紫の君は祖母の喪が明け、新しい小袿を着ます。
場面 第6–10場面
第6場面新年、雛遊び新年の朝、源氏が二条院に寄ると、紫の君は雛遊びに夢中です。乳母・少納言の言葉で、自分には「夫」がいるのだと初めて気づく姫君の無邪気さが描かれます。第7場面大殿の正月左大臣邸を訪れた源氏は、葵の上に今年こそ打ち解けてほしいと語りますが、隔ては埋まりません。舅の左大臣は帯を手ずから持って源氏の装束を整え、生きがいというほどに世話を焼きます。第8場面出産を待つ人々参賀に三条の宮を訪れた源氏を、女房たちは成長するほど美しいと褒め、藤壺は几帳越しに物思います。出産予定の十二月を過ぎても生まれず、物の怪かと噂される中、源氏は人知れず修法をさせ、ついに二月、男御子が生まれます。第9場面若宮を見たい源氏生まれた若宮は源氏に生き写しでした。源氏は若宮を一目見たいと王命婦に泣いて訴え、「いかさまに昔結べる契りにて」の歌を託しますが、藤壺は露見への恐れに心を閉ざし続けます。第10場面四月の参内、撫子の歌若宮が参内し、帝は源氏にそっくりな顔を「似通うものだ」と喜びます。いたたまれず退出した源氏は、常夏(撫子)の花に歌を添えて命婦のもとへ送り、藤壺から短い返歌を得て涙します。
場面 第11–15場面
第11場面紫の君に慰められる思い沈む源氏は西の対の紫の君のもとで笛と琴を教え、膝で眠る姫君を見捨てられず外出を取りやめます。噂は葵の上や帝の耳にも入り、帝は「どんな隈に隠れ歩くのか」と源氏をいとおしがります。第12場面源典侍の扇色好みと評判の老女官・源典侍に、源氏は扇を取り替えて歌を詠みかけます。「君し来ば手なれの駒に」の歌に源氏は笹と駒で切り返し、その様子を障子越しに見た帝に笑われます。頭中将も典侍に言い寄ります。第13場面温明殿の密会と頭中将の闖入夕立の宵、琵琶を弾く源典侍のもとを源氏が訪れた夜、様子を窺っていた頭中将が太刀を抜いて踏み込みます。源氏は相手が中将と見破って着物を脱がせ合い、二人は破れた衣のまま歌を詠み交わして退出します。第14場面翌日の帯の応酬置き忘れた指貫と帯が典侍から届き、歌の応酬が続きます。殿上で顔を合わせた源氏と頭中将は、真面目な顔を取り繕いながら「鳥籠の山」と口止めし合い、以後もこの一件を脅しの種にされます。第15場面藤壺の中宮、源氏の参議七月、藤壺が中宮に立ち、源氏は参議となります。帝は若宮を東宮に立てる布石として母宮の地位を固めたのでした。輿に供奉する源氏は「尽きもせぬ心の闇に暮るるかな」と独りごち、若宮はますます源氏に似てゆきます。
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第7冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。