ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第7帖 紅葉賀 / 第5場面

三条の宮の見舞い

あらすじ・人物・読み方

源氏は藤壺の里邸・三条の宮を訪ねますが、女房越しの他人行儀な応対しか得られません。兵部卿宮と物語するうちに日は暮れ、疎まれる辛さだけが残ります。紫の君は祖母の喪が明け、新しい小袿を着ます。

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現代語で読む

藤壺が退出して行かれている三条の宮に、御様子も知りたくて〔源氏が〕参上なさると、命婦・中納言の君・中務といった女房たちが応対した。「他人行儀にもてなされるな」と面白くなく思うが、気持ちを鎮めて世間話を申し上げているうちに、兵部卿宮が参上なさった。

〔宮は〕この君がいらっしゃるとお聞きになって、対面なさった。とても風情のある様子で、色っぽくなよなよとしていらっしゃるのを、「女として見たら見事だろう」と、人知れず拝見するにつけても、あれこれと親しく思われて、懇ろにお話し申し上げなさる。宮も、この御様子が普段より格別に親しみやすく打ち解けていらっしゃるのを「まことに見事だ」と拝見なさって、娘婿などとは思いもよらず、「女として会いたいものだ」と、色めいたお気持ちでお思いになる。

日が暮れたので〔宮が〕御簾の内にお入りになるのを、羨ましく、昔は帝の御待遇のおかげで、とても間近に、人づてでなく物も申し上げたのに、すっかり疎んじられるのも辛く思われるとは、理不尽なことよ。

「しばしばお伺いすべきですが、格別の事でもない限り自然と滞ってしまいます。然るべき御用などがあれば、お言付けをいただければ嬉しく」などと、堅苦しい挨拶をして〔源氏は〕お出になった。命婦も取り持つ手立てもなく、宮の御様子も以前よりいっそう辛い事にお思い置きで、心の解けない御様子も気後れし痛ましくもあるので、何の効もなく月日が過ぎてゆく。「何とはかない契りだろう」と思い乱れることは、お互いに尽きない。

少納言は「思いがけず面白い世を見ることだ。これも亡き尼上がこの御事を案じて、御勤行にもお祈りくださった仏の御利益だろうか」と思われる。「大殿〔葵の上〕は立派な正妻としていらっしゃる。あちこち多くお通いなのを、本当に大人になられたら面倒な事も起きようか」と案じられる。しかし、こうして特別に引き立てられるお覚えのほどは、とても頼もしい限りである。

喪服は、母方の場合は三月でよいというので、晦日には〔姫君に〕お脱がせ申し上げなさるが、ほかに親もなくお育ちになったので、眩い色合いではなく、紅・紫・山吹の地のままに織った小袿などを召していらっしゃる様子は、たいそう今風で可愛らしい。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第7冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。