ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第7帖 紅葉賀 / 第6場面

新年、雛遊び

あらすじ・人物・読み方

新年の朝、源氏が二条院に寄ると、紫の君は雛遊びに夢中です。乳母・少納言の言葉で、自分には「夫」がいるのだと初めて気づく姫君の無邪気さが描かれます。

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現代語で読む

男君〔源氏〕は、朝拝に参内なさろうとして、〔西の対を〕覗かれた。「今日からは大人らしくなられましたか」と言って微笑まれているのが、とても見事で愛嬌がある。〔姫君は〕早くも雛を並べ立てて、忙しくしていらっしゃる。三尺の御厨子一具に道具類を並べ、また小さい家々を作り集めて差し上げてあったのを、辺りいっぱいに広げて遊んでいらっしゃる。

「追儺をしようといって犬君がこれを壊してしまったので、直しているのです」と言って、たいへんな事だと思っている。〔源氏が〕「なるほど、とても心ない人の仕業のようですね。すぐに直させましょう。今日は言忌みをして、お泣きなさってはいけません」と言って、お出になる御様子の場を圧する立派さを、女房たちが端に出て拝見するので、姫君も立ち出てお見送り申し上げ、雛の中の源氏の君を着飾らせて内裏へ参らせる真似などをなさる。

〔少納言が〕「せめて今年からでも少し大人らしくなさいませ。十歳を過ぎた人は雛遊びはいけないものですのに。このように御夫までお持ち申し上げたからには、奥様らしくしとやかにしていらっしゃらなければ。お髪を直す間さえ億劫がられるとは」などと、少納言が申し上げる。お遊びにばかり夢中なので、恥ずかしいと思わせようとして言うと、〔姫君は〕心の中で「私は、それでは、夫を持っていたのだ。この女房たちの夫というのは何と醜い人たちだろう。私はこんなに素敵で若い人を持っていたのだわ」と、今になってお分かりになった。とはいえ、御年が一つ増えた証しなのであろう。こんなに幼い御様子が何かにつけて目立つので、邸の女房たちも不思議に思ったが、まさかこれほど夫婦らしくないお添い寝相手だとは思わなかった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第7冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。