ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第7帖 紅葉賀 / 第8場面

出産を待つ人々

あらすじ・人物・読み方

参賀に三条の宮を訪れた源氏を、女房たちは成長するほど美しいと褒め、藤壺は几帳越しに物思います。出産予定の十二月を過ぎても生まれず、物の怪かと噂される中、源氏は人知れず修法をさせ、ついに二月、男御子が生まれます。

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〔源氏は〕参賀の挨拶といっても多くの所は回らず、内裏・春宮・一院ばかりで、あとは藤壺の三条の宮に参上なさる。「今日はまた格別にお見えですわ」「お育ちになるにつれて恐ろしいほどに増してゆく御美しさですわ」と女房たちが褒め申し上げるのを、宮〔藤壺〕は几帳の隙からほのかに御覧になるにつけても、物思うことが多かった。

お産の予定だった師走も過ぎてしまったのが気がかりで、今月こそはきっとと、宮の人々もお待ち申し上げ、内裏でもそのお心づもりがあったのに、何事もなく過ぎてしまった。「御物の怪のせいだろうか」と世の人も噂し騒ぐのを、宮はひどくつらく、「この事のために命を落としてしまうのだろう」とお嘆きになると、御気分もひどく苦しくお悩みになる。中将の君〔源氏〕はますます思い当たって、御修法などを、それとはなく方々におさせになる。「世の定めなさにつけても、このまま儚く終わってしまうのか」と、あれこれお嘆きになっているうちに、二月十日過ぎの頃に男御子がお生まれになったので、心配は残らず消え、内裏でも宮の人々もお喜び申し上げる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第7冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。