第9帖 葵 / 第4場面
祭り見物の人々と式部卿の宮
あらすじ・人物・読み方
行列の見物に都中が浮き立ち、源氏の光にすべてが圧倒されます。桟敷で見物する式部卿の宮は源氏の容貌に目を留め、姫君への思いを深くします。
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現代語で読む
それぞれの身分に応じて、装束も人の様子も、素晴らしく整っていると見える中でも、上達部はたいそう格別なのに、一方の御光〔源氏〕には圧倒されてしまうようだ。大将の仮の随身を、殿上人の将監などが務めるのは常のことではなく、珍しい行幸などの折の役目なのに、今日は右近の蔵人の将監がお仕えしている。そのほかのお随身どもも、容貌も姿も、眩いほど整えて、世に大切にされていらっしゃる様子は、木や草までもなびかないものはあるまいというほどである。
壺装束などという姿で、卑しくない身分の女房や、また尼などで世を背いた者なども、倒れんばかりに夢中で、見物に出ているのも、普段は、「無理をしているな、みっともない」と見えるのに、今日はもっともで、口をつぐんで、髪を着込めた怪しい者どもが、手を作って、額に当てながら拝み上げているのも、おかしな卑しい男まで、自分の顔がどうなるかも知らずに笑い栄えている。何とも見入るなさるまい、似非受領の娘などまでも、心の限りを尽くした車どもに乗り、様子をわざとらしく賢そうにしているのが、面白いあれこれの見物だった。
まして、あちこちに忍んでお通いになる所々では、人知れず数えきれない嘆きが増すのも、多かった。
式部卿の宮は、桟敷でご覧になっていた。「たいそう眩いほどに成長していく人の容貌だな。神などは目もお留めになるだろう」と、不吉なほどにお思いになっていた。姫君〔朝顔〕は、長年お聞き及びの〔源氏の〕お心構えが世の人と似ていないので、「並の程度であってさえほしい。まして、このようにまで、どうして」とお心に留めていた。ますます近くで見ようとまでは思い寄らない。若い人々は、聞き苦しいほど褒め合い申し上げている。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第9冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。