源氏物語 第9帖
葵 あおい
あらすじ
賀茂祭の車争いで傷ついた六条御息所の生霊が葵の上を苦しめます。若君の誕生と引き換えのように葵の上は世を去り、源氏は深い喪に沈みます。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面世の変わり目と院の諌め年が改まり、源氏は六条御息所への思いを断ち切れずに苦しみます。桐壺院は源氏の振る舞いを諌め、誰をも恨ませないよう言い聞かせます。第2場面斎宮の御禊と祭の行列四月、斎宮の御禊が行われます。その日の行列は世の注目を集め、源氏もとりわけの宣旨で供奉することになりました。第3場面車争い御禊の見物に出た葵の上の車と、忍びで来た六条御息所の車が場所を争い、御息所の車は奥へ押しやられてしまいます。屈辱に、御息所は歌を詠みます。第4場面祭り見物の人々と式部卿の宮行列の見物に都中が浮き立ち、源氏の光にすべてが圧倒されます。桟敷で見物する式部卿の宮は源氏の容貌に目を留め、姫君への思いを深くします。第5場面御息所への思慕と紫の君の髪削ぎ車争いを聞いた源氏は御息所を気の毒に思いますが、対面はかないません。祭見物の日、二条院では紫の君の髪を削ぎ、歌を交わします。
場面 第6–10場面
第6場面祭りの日の源典侍葵祭の日、源氏は場所を譲ってくれた女車の主に扇で応えます。その主は源典侍でした。歌の応酬の後も、典侍の思いは収まりません。第7場面御息所の苦悩と葵の上の物の怪伊勢へ下るか都に留まるか、御息所は思い乱れます。一方、大殿では葵の上が物の怪に悩み始め、源氏は修法を行わせます。第8場面仮住まいへの訪問と文の応酬修法のため仮住まいする御息所を、源氏が忍んで訪ねます。その後の文の応酬で、二人はなお思いの浅からぬことを確かめ合います。第9場面生き霊の夢御息所は、自分の魂が体を離れてさまよう夢を繰り返し見ます。生きたまま霊となって恨みを残すことの罪深さを思い、源氏への思いを断とうとします。第10場面若君の誕生葵の上の容態が急変し、物の怪が源氏に言葉を伝えます。その声は御息所のものでした。やがて若君が無事に生まれますが、御息所の苦悩は深まります。
場面 第11–15場面
第11場面葵の上の急逝産後の葵の上は回復しきらず、源氏は若君の愛らしさに慰められます。しかし除目の夜、大殿の人目の少ない折に、葵の上は急に息を引き取ります。第12場面鳥辺野の葬送葵の上の亡骸は鳥辺野に送られます。帰りの車の中で、源氏は煙の歌を詠み、薄墨の喪服に涙します。大宮は悲しみに沈み込むばかりです。第13場面弔いの文と時雨の訪問御息所から弔いの文が届き、源氏は返歌を送ります。法事も過ぎ、喪に籠もる源氏のもとへ頭中将が訪れ、時雨の空に歌を交わします。第14場面撫子のかたみと朝顔への文源氏は庭の撫子を大宮への歌に託し、大宮も返歌で涙を誘われます。徒然の慰めに、源氏は朝顔の姫君へ文を送り、返事を受け取ります。第15場面大殿を去り、二条院へ源氏は大殿の女房たちに別れを告げ、左大臣と涙の対面の末に大殿を去ります。葵の上の手習いの歌を見つけ、院と中宮のもとへ参内したのち、二条院へ帰ります。
場面 第16–16場面
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第9冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。