ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第10帖 賢木 / 第17場面

二条院への帰邸

あらすじ・人物・読み方

帰邸した源氏は紫の上と語らいます。紅葉を藤壺へ届けますが、藤壺は心惹かれながらも冷たくあしらいます。

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現代語で読む

女君〔紫の上〕は、この数日の間に、成人なさった心地がして、たいそうひどく静まっていらっしゃって、世の中はどうなるのだろうと思っている様子が、心苦しくしみじみとお感じになるので、つまらない心があれこれ乱れるのも分かるのであろうか、「色変わる」とあったのも愛らしく思われて、普段より格別にお語り申し上げなさる。

山土産に持たせていらっしゃった紅葉を、御前のものと見比べなさると、格別に染めまさった露の心も見過ごしがたく、気がかりなことも、人聞き悪いほどにお感じになるので、ただ大方として宮〔藤壺〕に差し上げなさる。命婦のもとに、「お入りになっていたのを、珍しいことと承っておりましたが、宮の間の事が、気がかりになっておりましたので、心静かでなく思いながらも、修行も勤めようなどと、思い立っておりました日数が、心ならず長くなってしまった次第です。紅葉は、一人で見ておりますと、錦も暗く思われますので。折よくご覧くださいませ」などとある。

なるほど、すばらしい枝どもなので、お目が留まるところに、例によって、少しばかりのものがあった。人々が拝見すると、お顔の色も変わって、「やはり、このようなお心が絶えなさらないことが、まことに疎ましい。惜しくも思いやり深くていらっしゃる方が、突然に、このようなことを、折々に交ぜなさるのを、世間の人も不思議に見ることでしょう」と、好ましくなくお思いになって、瓶にお挿させて、廂の柱のもとに押しやらせなさってしまった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第10冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。