源氏物語 第10帖
賢木 さかき
あらすじ
六条御息所は斎宮とともに伊勢へ下り、桐壺院は崩じ、藤壺は出家します。去りゆく人々の中で源氏は寂寥を深め、朧月夜との密会が露見して右大臣の怒りを招きます。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面伊勢下向の決意斎宮の伊勢下向が近づき、六条御息所は源氏への未練を断って娘に付き添い下る決意を固めます。源氏は手紙だけを交わし、対面は叶いません。第2場面野の宮への訪問九月七日ごろ、源氏は嵯峨野の野宮を訪れます。秋の野辺のあはれな景色の中、御息所は物越しの対面をためらいながらも、やがて簀子に上がることを許します。第3場面榊の贈答夕月夜に照らされた源氏は、折り取った榊を御簾に差し入れます。帖名の由来となる榊の歌を交わし、久しぶりの対面に源氏の思いは乱れます。第4場面暁の別れ夜通し語り明かした二人は、明けゆく空に別れの歌を交わします。露に濡れた道を帰る源氏を、御息所は名残惜しく見送ります。第5場面下向の日の決定後朝の文に心が揺れながらも、下向の決意は変わりません。源氏は旅の装束や調度を贈りますが、御息所はただ身の不名誉を嘆きます。
場面 第6–10場面
第6場面桂川の御祓と斎宮の歌九月十六日、桂川で御祓が行なわれます。源氏の文に斎宮から大人びた返歌があり、源氏はほほ笑みながらも複雑な思いを抱きます。第7場面伊勢への出立斎宮は帝に別れの櫛を挿していただき、夕闇の中を伊勢へ出立します。二条院の前で源氏が榊に歌を添え、翌日、関の向こうから返歌が届きます。第8場面桐壺院の御病神無月に入り、桐壺院のご病気が重くなります。行幸した朱雀帝に、院は東宮の後見と源氏のことを繰り返し言い残します。第9場面桐壺院の崩御大后の参上も待たず、桐壺院は崩御します。四十九日が過ぎ、藤壺は三条の宮へ移り、兵部卿宮や王命婦と御前で故院を偲ぶ歌を交わします。第10場面諒闇の新年年が改まっても世は静かで、源氏は籠もりがちです。御匣殿が尚侍となり朧月夜は時めきますが、源氏の忍び通いはなお絶えません。
場面 第11–15場面
第11場面朧月夜との逢瀬五壇の御修法の隙をうかがい、源氏は尚侍の君のもとへ忍びます。夜明けの声に贈答を交わし、名残惜しく退出します。第12場面塗籠に籠もる源氏東宮への危害を恐れる藤壺は源氏を避け続けますが、ある折、源氏は病と偽る藤壺の御所に忍び入り、発病の騒ぎの中で塗籠に押し入れられてしまいます。第13場面塗籠の夜の明けるまで源氏は夜通し怨み言を述べますが、藤壺は応じません。明け方、歌を交わして源氏は人目を忍んで退出します。第14場面藤壺、出家を思し立つ藤壺は東宮のためにも出家を決意し始めます。参上した東宮と言葉を交わし、髪を下ろした姿を冗談めかして語る場面では、なお美しい尼姿が思い描かれます。第15場面雲林院の参籠秋、源氏は北山の雲林院に参籠します。紅葉の野山に故人を思い、紫の上と歌を交わして、二、三日を過ごします。
場面 第16–20場面
第16場面朝顔斎院への文近くの賀茂斎院・朝顔の姫君にも文を贈り、木綿欅に寄せた歌を交わします。帰京の道すがら、源氏はなお昔の人々に思いを残します。第17場面二条院への帰邸帰邸した源氏は紫の上と語らいます。紅葉を藤壺へ届けますが、藤壺は心惹かれながらも冷たくあしらいます。第18場面朱雀帝との対面源氏は朱雀帝に参上し、昔今の物語を交わします。帝は東宮への心寄せを語り、源氏も野の宮の曙のことを打ち明けます。第19場面藤壺への挨拶退出の挨拶に参った源氏は、月に寄せた歌を命婦に託して藤壺へ伝えます。藤壺の返歌に、源氏はつらさを忘れて涙を落とします。第20場面朧月夜からの文初時雨のころ、朧月夜から待ちわびた歌が届きます。源氏は唐の紙を選り出して、情のこもった返事をしたためます。
場面 第21–25場面
第21場面故院の国忌と法華八講十一月一日、故桐壺院の国忌に歌を交わし、十二月の法華八講の結願の日、藤壺は人々の驚きの中、髪を下ろして出家します。第22場面出家の夜人々が退出した後、源氏は藤壺の御前に参ります。月の夜に歌を交わしますが、決意の固い藤壺に、源氏は思いを明かせないまま退出します。第23場面残された源氏藤壺の出家後、源氏は東宮のことだけを心苦しく思い、年内に三条の宮の調度を整えさせます。第24場面諒闇明けの新年年が改まり、源氏は藤壺の御堂を訪れます。青鈍の御簾のかたわらで浦島の歌を交わし、源氏は涙をこぼして退出します。第25場面源氏一派の不遇藤壺の宮人たちも源氏の一派も昇進から漏れ、左大臣は致仕して籠もります。一族だけが栄える世に、源氏は頭中将と静かに交わりを続けます。
場面 第26–28場面
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第10冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。