第10帖 賢木 / 第23場面
残された源氏
あらすじ・人物・読み方
藤壺の出家後、源氏は東宮のことだけを心苦しく思い、年内に三条の宮の調度を整えさせます。
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現代語で読む
お邸でも、ご自分の御方に一人打ち臥していらっしゃって、お目も合わず、世の中が厭わしくお思われになるのにも、東宮の御ことだけが心苦しい。「母宮だけでも朝廷側のお方にと、〔院が〕お思い置きになったのに、世の憂さに堪えず、このようになってしまわれたので、もとの御位にもいらっしゃれまい。私までがお見捨て申し上げては」などと、お思い明かすことは限りない。
「今は、このような方面の御調度どもをこそ」とお思いになるので、年のうちにと、お急がせになる。命婦の君もお供になってしまったので、そのことも心深くお見舞いなさる。詳しく言い続けるには、大げさな様子なので、省いてしまったようである。とはいえ、このような折こそ、興趣ある歌などが出て来るものでもあるが、物足りないことであるよ。
参上なさるのも、今は遠慮が薄らいで、ご自身でお申し上げになる折もあった。思いしめてきたことは、さらにお心に離れないけれども、まして、あるまじきことであるよ。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第10冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。