ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第10帖 賢木 / 第24場面

諒闇明けの新年

あらすじ・人物・読み方

年が改まり、源氏は藤壺の御堂を訪れます。青鈍の御簾のかたわらで浦島の歌を交わし、源氏は涙をこぼして退出します。

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現代語で読む

年も改まったので、宮中の辺りは華やかに、内宴や踏歌などをお聞きになるのも、物事がしみじみと感じられて、ご修行を静かになさりながら、後の世のことだけをお思いになるにつけて、頼もしく、煩わしかったことが、離れてお思われになる。常の御念誦堂は、そういうものとして、特に建てられた御堂が、西の対の南にあたって、少し離れた所にお移りあそばして、格別なご修行をおさせになる。

大将が、参上なさっていた。改まる様子もなく、宮の内はのどかで、人目も稀で、宮司どもの親しい者ばかりが、打ちうなだれて、見慣れたためであろうか、物憂げに思っていた。白馬の節会ばかりは、なお引き替えないもので、女房などが見ていた。所狭しと参集なさっていた上達部などが、道を避けながら引き過ぎて、向かいの大殿に集まっていらっしゃるのを、こうなるべきこととはいえ、しみじみとお思われになるにつけて、千人にも替えがたいご様子で、深く尋ねて参上なさっているのを御覧になると、わけもなく涙ぐまれる。

お客人〔源氏〕も、たいそう物悲しい様子に、見回していらっしゃって、すぐには何もおっしゃらない。様子の変わったお住まいに、御簾の端、御几帳も青鈍で、隙間からほのかに見える薄鈍や、梔子色の袖口などが、かえって艶めかしく、奥ゆかしく思いやられなさる。「解け渡る池の薄氷や、岸の柳の様子だけは、時を忘れない」などと、あれこれ眺められなさって、「なるほど心がある」と、静かに口ずさみなさっているのは、類なく艶めかしい。眺めやる、海人の住処かと見るにつけて、まず涙に濡れる松が浦島です。と申し上げなさると、奥深くもなく、みな仏にお譲り申し上げていらっしゃるお座所なので、少し近しい心地がして、昔の世の名残さえもない浦島に、立ち寄る波の珍しいことよ。とおっしゃるのも、ほのかに聞こえるので、堪えていらっしゃるけれど、涙がほろほろとこぼれてしまった。世を思い澄ました尼君たちが見ているだろうのも、体裁が悪いので、言葉少なくお出になってしまった。

「まことに、類なく成人なさることよ」「心もとない所なく世に栄え、時に合いなさった時は、そうしたお一方なので、何につけて世の中をお思い知りになるだろうかと、推し量られていらっしゃったものを」「今はたいそう思い静めて、はかないことにつけても、物悲しい様子までお添えになっていらっしゃるのは、つまらなく心苦しくもあることよ」などと、年老いた人々は、泣きながら、お褒め申し上げる。宮もお思い出すことが多かった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第10冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。