ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第12帖 須磨 / 第10場面

須磨の新居

あらすじ・人物・読み方

行平中納言の旧居近くに新しい住まいが整えられる。良清らが仕え、国の守も心を寄せる。

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現代語で読む

お住まいになるべき所は、行平の中納言が、「藻塩垂れつつ」と侘びた住まいの近くのあたりであった。海岸はやや入り込んで、しみじみともの寂しそうな山中である。

垣の様子から始めて、珍しそうにご覧になる。茅葺きの家どもや、葦で葺いた廊のような屋などが、趣あって設えてある。土地にふさわしいお住まいで、様子が変わって、「このような折でなければ、趣もあっただろうに」と、昔のお心の遊びをお思い出しになる。

近くの所々の御荘の司を召して、しかるべきことどもなどを、良清朝臣が、親しい家司として、仰せを行っていくのも心打たれる。間に合わせのうちに、たいそう見所があってお作らせになる。水を深く引いて流し、植木どもなどをして、今はもうと落ち着かれる心地は、現実とは思えない。国の守も親しい宮仕え人なので、忍んで心を寄せてお仕えする。このような旅の住まいともなると、人騒がしいけれども、きちんとお話し合わせるべき人がいないので、知らない国の心地がして、たいそう埋もれたように、「どうやって年月を過ごそうか」と思いやられる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第12冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。