第13帖 明石 / 第15場面
残された人々
あらすじ・人物・読み方
源氏の去った明石。姫君は涙に沈み、母君は入道をなじって嘆き、入道は行道で遣水に倒れるほど取り乱す。
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当の姫君の心地は、例えるべき方もなくて、このように人に見えまいと思い沈むけれど、身の憂きを本として、無理なことではあるが、置き捨てなさった恨みのやり場がないので、激しいことはただ涙に沈んでいる。母君も慰めかねては、
「どうして、このように心尽くしなことを思い始めたのだろう。すべて、僻んだ人に従った心の怠りだ」と言う。
「ああ喧しい。お捨てになるまいこともなさるようなので、そうは言っても、お思いのところはあるだろう。思い慰めて、御湯などをせめて参れ。ああ、忌まわしい」と言って、片隅に寄って座っている。乳母や母君など、僻んだ心を言い合わせながら、
「いつか、どうにか思う様子で拝見しようと、年月を頼みに過ごし、今や思いが叶うと頼み申し上げたのに、心苦しいことをもののはじめに見ることだな」
と嘆くのを見るにつけても気の毒なので、ますますぼんやりさせられて、昼は一日中寝てばかり寝暮らし、夜はすっくと起きて座って、「数珠の行方も知らなくなった」と言って、手を押し擦って仰いでいる。
弟子どもに嗤われて、月夜に出て行道する者は、遣水に倒れ入ってしまった。趣のある岩の片側に腰も掛け損ねて、病み臥している間に、少し物が紛れた。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第13冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。