源氏物語 第13帖
明石 あかし
あらすじ
須磨の大嵐と父帝の夢に心動かされた源氏は、明石入道の誘いに応じて明石の浦へ移る。入道の娘・明石の君との文の贈答を経て契りを結ぶ一方、都では帝の病と政変が源氏の赦免を早め、懐妊した明石の君を残して源氏は秋に帰京する。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面須磨の大嵐須磨の嵐は数日やまず、雷が落ちて廊を焼くほどになる。二条院の紫の上から文が届き、源氏は住吉の神や龍王に願を立てて助けを祈る。第2場面夢の父帝嵐がようやく静まり、うたた寝の夢に亡き桐壺帝が現れる。住吉の神の導きに従ってこの浦を去れと告げられ、源氏は救われた思いに胸を塞がれる。第3場面明石への船出夢のお告げで舟を用意していた明石入道の迎えが着く。父帝の夢の教えとも合致し、源氏は夜明け前に舟に乗り、風に運ばれて明石に着く。第4場面明石の館明石の浜の館は入道が領する見どころの多い土地で、都の邸にも劣らない調えである。心の静まった源氏は都へ文を送り、紫の上には歌を添えて思いをやる。第5場面入道と姫君入道は娘一人の将来に心を砕き、仏神に祈りを重ねる。源氏も姫君の並々でない気立てに惹かれながら表向きは慎みを保ち、姫君は身の程を思って源氏を遠く感じる。
場面 第6–10場面
第6場面琴の調べ四月の夕月夜、源氏の弾く琴の音に岡辺の姫君の箏が応える。入道は、娘こそ延喜以来の御手を四代に伝える弾き手であることを涙ながらに明かす。第7場面入道の打ち明け話更けた夜、入道は住吉の神に十八年祈り続けた娘への悲願を打ち明ける。源氏は浅からぬ前世の契りを思い、入道は一人寝の歌を贈って思いを推し量らせる。第8場面文の贈答源氏の文に、姫君は父に入道に代筆させ、やがて自ら「いぶせくも」の歌を返す。歌の応酬が続くが、姫君の気位は高く、なお逢瀬には至らない。第9場面都の騒ぎ都では物の兆しがしきりに起こり、朱雀帝は夢で桐壺院に睨まれて目を患う。太政大臣の死もあって源氏の赦免が論じられるが、弘徽殿の后の諌めで延びてしまう。第10場面忍び逢い十三日の月夜、入道のしつらいで源氏は岡辺の宿を訪れる。姫君は姿を見せず、箏の音と歌の応酬だけで夜が更けてゆく。
場面 第11–15場面
第11場面紫の上の返歌源氏は明石の君のもとへ忍び通う一方、紫の上への文は例より細やかになる。夢語りを添えた源氏の文への紫の上の返歌二首に、源氏は胸を打たれる。第12場面懐妊と帰京の沙汰年が明け、都では帝の目病と后の物の怪が重なり、ついに源氏の赦免の宣旨が下る。明石の君には懐妊の兆しがあり、別れの日が迫ってゆく。第13場面別れの琴帰京を明後日に控え、源氏は最後に岡辺の宿を訪れる。藻塩の煙の歌を交わし、琴と箏の調べに涙する夜、形見の和琴に中の緒の約束が結ばれる。第14場面明石の別れ暁の出発。明石の君と別れの歌を交わし、入道からは狩衣の贈り物と見送りの歌を受ける。都を出た春に劣らぬ秋の別れである。第15場面残された人々源氏の去った明石。姫君は涙に沈み、母君は入道をなじって嘆き、入道は行道で遣水に倒れるほど取り乱す。
場面 第16–16場面
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第13冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。