第13帖 明石 / 第9場面
都の騒ぎ
あらすじ・人物・読み方
都では物の兆しがしきりに起こり、朱雀帝は夢で桐壺院に睨まれて目を患う。太政大臣の死もあって源氏の赦免が論じられるが、弘徽殿の后の諌めで延びてしまう。
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現代語で読む
その年、朝廷に、物の兆しがしきりにあって、物騒がしいことが多かった。三月十三日、雷が鳴り光り、雨風の騒がしい夜、帝の御夢に、院の帝〔桐壺院〕が御前の御階の下にお立ちになって、御様子がたいそう悪くて睨み申し上げなさるのを、畏まっていらっしゃる。申し上げなさることも多かった。源氏の御事であったのだろう。
たいそう恐ろしく、気の毒にお思いになって、后に申し上げなさると、
「雨などが降り、空の乱れた夜は、思いなしであることはそうでしょう。軽々しいように、お驚きになるべきことではありません」と申し上げなさる。
睨まれなさったのに目を見合わせなさったと見たためだろうか、御目をお患いになって、堪えがたくお悩みになる。御謹慎は、内裏にも宮にも限りなくさせなさる。
太政大臣がお亡くなりになった。もっともな御高齢ではあるが、次々と自然に騒がしいことがあるところに、大宮もとりとめなくお患いになって、日が経つとお弱りになるようすで、内裏でお嘆きになることはさまざまである。
「やはり、この源氏の君が、まことに犯しなくてこのように沈んでいるならば、必ずこの報いがあるだろうと思われます。今は、やはり元の位をもお与えになろう」とたびたびお思いになりおっしゃるのを、
「世の非難や、軽々しいようであるでしょう。罪を懼れて都を去った人を、三年さえ過ぎずにお許しになることは、世の人もどう言い伝えるでしょうか」などと、后が固くお諌めになるので、お思い憚るうちに月日が重なって、御悩みどもがさまざまに重く増しなさる。
明石では、いつものように、秋は浜風のことで、一人寝も真実に物侘びしくて、入道にも折々語らせなさる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第13冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。