ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第14帖 澪標 / 第1場面

帰京と御八講

あらすじ・人物・読み方

夢に立った院の帝の御ことを源氏は忘れかね、神無月に御八講を催して孝養を尽くす。弘徽殿大后の御病も重く、宮中の空気は代替わりへと傾いていく。

下の同じ枠で原文・発音の読み・現代語を一節ずつ確認できます。どの読み方から始めても読了を記録できます。

表示と音声の設定

任意の復習へ

現代語で読む

はっきりとお見になった夢の後は、院の帝の御ことを心におかけ申し上げなさって、「どうにかして、あの〔父帝が〕沈んでおられるという罪を、お救い申し上げることをしよう」と、お思い嘆いていらしたが、こうして帰京なさっては、その〔孝養の〕ご準備をなさる。神無月に御八講を催しなさる。世の人が靡き従ってお仕え申し上げることは、昔のようである。

大后は、ご病気が重くていらっしゃる中でも、「ついにこの人を消すことができずに終わることよ」と、心を病んでお思いだったけれど、帝は院の御遺言をお思い申し上げなさる。物の報いがあるにちがいないとお思いだった〔源氏の処遇〕を、改め立てなさって、御心は涼しくお思いだった。時々腫れてお悩みだった御目も、さわやかにおなりになったけれど、「だいたい世に長くはいられまい、心細いこと」とばかり、〔ご寿命が〕長くないことをお思いになりながら、常にお召しがあって、源氏の君は参上なさる。世の中のことなども、隔てなくおっしゃりながら、〔帝の〕御本意のようであるので、世間の人も皆、やたらと、うれしいことと喜び申し上げるのだった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第14冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。