ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第14帖 澪標 / 第12場面

住吉詣

あらすじ・人物・読み方

秋、源氏は人々の見送りを受けて住吉へ参詣する。明石の君の一行も近くに参籠していたが、対面は果たされず、並び立つ市女笠の列に源氏一行は見とれる。

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現代語で読む

その秋、〔源氏は〕住吉に参詣なさる。願いごとを果たしなさるべきなので、厳めしい御行列で、世の中を揺るがして、公卿も殿上人も、我も我もとお仕え申し上げなさる。

折しも、あの明石の人が、年ごとの例のことで参詣するのを、去年と今年は差し障りがあって怠っていたが、恐れ慎むことを取り重ねて、思い立ったのであった。

〔明石の一行は〕舟で参詣していた。岸に漕ぎ着く頃、見ると、騒がしく参詣なさる人の気配が渚に満ちて、厳かな神宝を持ち続けている。楽人や十列などは、装束を整え、容貌のよい者を選んでいる。

「誰が参詣なさっているのか」

と尋ねる様子を見ると、

「内大臣殿の御願い果たしに参詣なさるのを、知らない人もあったのだ」

と言って、取るに足りないほどの下衆までも、気持ちよさそうに笑っている。

「本当に、あきれたことに、月日もあろうものを。かえって、この御様子を遥かに見るのも、身のほどが口惜しく思われる。さすがに、〔源氏と〕懸け離れ申し上げない宿世ながら、このように口惜しい身分の者までも、物思いもなさそうに、お仕え申し上げるのを晴れの折と思っているのに、何の罪深い身で、心にかけて気がかりに思い申し上げながら、このような御評判をも知らずに、出て来てしまったのだろう」

などと思い続けるにつけ、たいそう悲しくて、人知れず涙に濡れるのだった。

松原の深緑なのに、花や紅葉を濃く散らしたかと見える表の衣の、濃いのや薄いのが数知れない。六位の中でも蔵人は青色がはっきり見えて、あの賀茂の瑞垣を恨んだ右近将監も靫負になって、仰々しい随身を具した蔵人である。

良清も同じ佐で、人より格別に物思いのない様子で、仰々しい赤い衣姿が、たいそうきれいである。

すべて見慣れた人々も、引き変わって華やかに、何事を思うのだろうと見えて、散らばっているところに、若々しい公卿や殿上人が、我も我もと思い競って、馬の鞍まで飾りを整えて磨いていらっしゃるのは、素晴らしいものだと、田舎の人も思った。

御車を遥かに見やると、かえって心苦しくて、恋しい御姿をも拝見することができない。河原大臣の御例に倣って、童随身をお受けになったのが、たいそう愛らしく装束して、みづらを結い、紫の裾濃の元結が艶めかしく、丈や姿が整って、美しい様子で十人、様子が格別に今風に見える。

大殿の御腹の若君を、限りなく大切にお立てして、馬添いや童のほどを皆作り合わせて、様子を変えて装束を分けている。

雲の彼方に遥かに立派に見えるにつけても、若君〔明石の姫君〕が数にも入らぬ様子でいらっしゃるのを、ひどいことだと思う。ますます御社の方を拝み申し上げる。

国の守が参って、御饗応は、例の大臣などが参られる時よりも、格別に世にないほどお仕え申し上げたことであろうよ。

たいそうきまりが悪いので、

「立ち交じって、数にも入らぬ身が、少しのことをするのに、神もお目に留めて、数に入れてくださるはずもない。帰るのにも中途半端である。今日は難波に舟を留めて、せめて祓いをしよう」

と言って、漕ぎ渡ってしまった。

君〔源氏〕は、夢にもお知りにならず、一晩中、いろいろのことをさせなさる。まことに、神がお喜びになるべきことをし尽くして、過去の御願いにも付け加え、ありがたいほどに、管弦の遊びを騒がしく夜を明かしなさる。

惟光のような人は、心のうちに神の御徳をしみじみ立派だと思う。〔源氏が〕ふと立ち出でなさったところに、お仕えして、〔明石の人のことを〕申し出ていた。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第14冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。