第14帖 澪標 / 第14場面
明石の君への誘い
あらすじ・人物・読み方
源氏は明石の君の上京を誘う文を使者に託す。入道は喜びながらもなお時節を待ち、娘の決意もすぐには定まらない。
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現代語で読む
道中そのままに、甲斐ある逍遥として遊び興じなさるけれど、御心にはなお〔明石の君のことが〕掛かって思いを寄せなさる。遊女たちが集まって参っているが、上達部と聞こえる人々のうち若やかで風流好みらしき者は、皆、〔源氏の〕目に留まりそうである。しかし、「いや、面白いことも、ものの哀れも、人次第であるはずだ。並々のことにさえ、少し情けの淡い方に寄ってしまったのは、心を留める頼りもないものを」とお思いになると、自分の心を持て余して、気取って騒ぎ合っているのも疎ましくお思いになった。
あの人〔明石の君〕は、過ぎた日々を越えて、翌日が吉日であったので、御幣を奉った。折につけた願いごとの数々なども、どうにか果たした。また、かえって物思いが加わって、明け暮れ、口惜しい身の上を思い嘆く。
今頃は都にお着きだろうと思うほど日数も経たないうちに、〔源氏からの〕お使いがあった。この頃のうちに〔上京するよう〕迎えようとおっしゃっている。
「たいそう頼もしく、〔迎える者として〕数に入れておっしゃるようだけれど、さあどうだろう、また島を漕ぎ離れて、中途半端な身の置き所に心細いことがあるのではないか」
と、〔明石の君は〕思い煩う。
入道も、こうなって〔娘を〕送り出してしまうのは、たいそう気がかりで、かといって、このまま埋もれて過ごさせることを思うのも、かえって過ぎた年ごろよりも心を尽くすことである。何かと遠慮深く、思い立つことが難しい旨を申し上げる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第14冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。