第17帖 絵合 / 第4場面
須磨・明石の絵日記
あらすじ・人物・読み方
源氏は須磨・明石の旅日記の絵の箱を取り出し、この機会に初めて紫の上にも見せる。日記に書き添えられた歌を交わし合ううち、明石の家居の絵に源氏の思いは募る。
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現代語で読む
あの旅のご日記の箱をも取り出させなさって、このついでに、女君〔紫の上〕にもお見せ申し上げなさった。ご事情を深く知らないで今見る人でさえ、少しでも物思いを知る人なら、涙を惜しむはずもなくあわれである。まして、忘れがたく、あの世の夢をお覚ましになる折の絶えないお心には、返し返し悲しく思い出されなさる。今までお見せにならなかった恨みを、〔紫の上は〕申し上げなさった。
一人でいて嘆いていた頃よりも、海人の住む方を描いて、見るのがよかったのだ。
はっきりしないことは、慰めになっただろうものを」とおっしゃる。たいそうあわれと、お思いになって、
つらい目を見たその折よりも、今日はまた、過ぎ去った日々へと帰ってゆく涙であることよ。
中宮〔藤壺〕だけには、お見せ申し上げるべきものである。欠けることのないよう一帖ずつ、さすがに浦々の様子がはっきりと見えるものを、お選びになるついでにも、あの明石の住まいこそ、まず、「どうしていることか」とお思いやりにならない時の間もない。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第17冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。