源氏物語 第17帖
絵合 えあわせ
あらすじ
前斎宮が入内して梅壺女御となり、絵を好む冷泉帝のもとで朱雀院方と梅壺女御方の絵合が催される。源氏の須磨・明石の絵日記が決め手となり、物語絵の優劣をめぐる論争と歌の応酬ののち、源氏は出家を志して嵯峨に御堂を造らせ始める。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面前斎宮の入内と櫛の筥の歌前斎宮の入内が近づく。中宮が後見を心にかける一方、朱雀院は櫛の筥をはじめ心づくしの贈り物を用意し、挿櫛の筥に歌を添える。源氏はその歌に院の思いの深さを汲み、斎宮の返歌に心を乱す。第2場面前斎宮の入内と帝の御覧源氏は院に憚りながらも入内の支度を整え、前斎宮は夜更けて参上する。冷泉帝は弘徽殿女御と前斎宮とを見比べ、権中納言や兵部卿宮もそれぞれに思いを寄せる。第3場面絵を好む帝と物語絵冷泉帝は絵をことのほか好み、斎宮女御と描き交わす。若い殿上人も真似る中で、権中納言は負けじと優れた絵師に名画を集めさせ、源氏は邸の厨子から古絵を選り始める。第4場面須磨・明石の絵日記源氏は須磨・明石の旅日記の絵の箱を取り出し、この機会に初めて紫の上にも見せる。日記に書き添えられた歌を交わし合ううち、明石の家居の絵に源氏の思いは募る。第5場面物語絵の論争弥生の頃、集められた物語絵を前に、梅壺方と弘徽殿方の女房が左右に分かれて論争を始める。まず『竹取の翁』と『宇津保の俊蔭』が合わされ、次に『伊勢物語』と『正三位』が取り上げられる。
場面 第6–10場面
第6場面伊勢物語をめぐる歌の応酬『伊勢物語』と『正三位』の優劣をめぐって、平内侍と右の典侍が歌を交わして応酬し、中宮も歌を添える。若い女房たちは絵を一目見たがるが、固く秘められる。第7場面朱雀院の絵と歌の贈答源氏は勝負を御前で決めることを提案し、秘蔵の須磨・明石の二巻を取り混ぜる。朱雀院は斎宮下向の儀式を描かせた絵を梅壺へ贈り、前斎宮と歌を交わす。第8場面絵合の日定めの日、左右の絵が装束も華やかに運び出され、帥宮が判者を務める。勝負は夜まで決まらず、最後に出た左の「須磨」の巻に一同は涙し、左の勝ちが決まる。第9場面夜の語らいと管弦夜明け近く、源氏は帥宮と言葉を交わし、亡き院の諌めと絵の才を語り合って涙する。月下に御琴が召し出され、朝ぼらけまで管弦が続く。第10場面絵合の後と嵯峨の御堂「須磨」の巻は中宮のもとに留め置かれることになる。栄華の盛りの御代にあって、源氏は無常を思って出家を志し、山里に御堂を造らせ始める。
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第17冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。