第18帖 松風 / 第10場面
琴の贈答
あらすじ・人物・読み方
御堂の行事を定めた源氏は、夜、かの琴を取り出して掻き鳴らし、変わらぬ調べに歌を添える。明石の君は松の響きに音を添えたと返し、契りの深さが確かめられる。
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現代語で読む
御寺にお渡りになって、月ごとの十四、五日、晦日の日に、行われるべき普賢講、阿弥陀、釈迦の念仏の三昧をそれとして、また加えて行わせなさるべきことなどを、お定め置きになる。堂の飾り、仏の御具などを、巡らしてお命じになる。月の明るい頃にお帰りになる。
過ごした夜のことが、思い出されるまま、折を過ごさず、あの琴の御琴をお出しになった。そこはかとなく物哀れなのに、堪えきれずお弾き鳴らしになる。まだ調べも変わらず、弾き返して、その折と今の心地をなさる。
約束したのに変わらない琴の調べで、絶えることのない心のほどはお分かりでしたか。
女〔明石の君〕は、
変わるまいと約束したことを頼みにして、松の響きに音を添えましたことよ。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第18冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。