ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第19帖 薄雲 / 第4場面

二条院の姫君、袴着

あらすじ・人物・読み方

二条院に着いた姫君は、華やかな邸に迎えられ、乳母の部屋も用意される。母を求めてひそむ姫君も、やがて紫の上に懐いて馴染んでいく。袴着の日には、襷を引き結んだ姫君の胸元がひときわ可愛らしく見える。

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現代語で読む

道すがら、〔大堰に〕残った人〔明石の君〕の心苦しさを、「どうだろう。罪を得るだろうか」とお思いになる。

暗くなって〔二条院に〕お着きになり、御車を寄せるそばから華やかで様子の違うありさまに、田舎びた心地の者どもは、「みっともなく交じっていられるだろうか」と思っていたけれど、西側を特別にしつらわせなさって、小さな御調度どもを、可愛らしくお整えさせなさっていた。乳母の部屋には、西の渡殿の北に当たる所をお与えになっていた。

若君〔姫君〕は、道中でお眠りになっていた。抱き下ろされて、泣くなどはなさらない。こちらで御菓子などを召し上がったりなさるけれど、だんだん見回して、母君が見えないのを求めて、可愛らしくひそんでいらっしゃるので、乳母を呼び出して、慰めて紛らわせ申し上げる。

「山里の徒然は、ましてどうだろう」と思いやるのは痛ましいけれど、明け暮れ〔紫の上が〕お思いの通りに大切にお育てになってご覧になるのは、釣り合いのとれた心地がなさるだろう。

「どうしたことか、人から咎められるような欠点のない方は、この辺りにはお出でにならなくて」

と、残念にお思いになる。

しばらくは、人びとを求めて泣くなどなさったけれど、だいたい安心で愛らしい性質なので、上〔紫の上〕にたいそうよく懐き睦み申し上げなさったので、「たいそう可愛いものを得た」とお思いだった。格別なこともなく抱いて扱い、お相手をして遊ばせ申し上げて、乳母も自然と近くでお仕えすることに慣れていった。また、身分の高い家の乳母で乳のある人が、付き添って参られた。

御袴着は、どれほどわざわざ急ぐということはないけれど、様子の違う立派なものである。お部屋のしつらえは、雛遊びのような心地がして趣深く見える。参られた客人どもは、ただ明け暮れと区別がないので、特に目立つこともなかった。ただ、姫君の襷を引き結びなさった胸元だけが、可愛らしさを添えて見えなさった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第19冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。