ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第19帖 薄雲 / 第5場面

大堰の贈り物、年の暮れと新年

あらすじ・人物・読み方

源氏は大堰の明石の君を絶えず恋しく思い、直接尋ねる代わりに乳母をはじめ御方の人々へ世にもないほどの贈り物を届け、年の内にも忍んで訪れる。年が明けると二条院では参集した人々が華やかに新年を過ごし、東の院の花散里も控えめながら源氏の心遣いを受けて穏やかに暮らす。

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現代語で読む

大堰の〔明石の君〕のことは、絶えず恋しく思うにつけても、〔訪れない〕ご自分の怠りをも嘆き添えていらした。あれほどおっしゃっていたように、尼君もますます涙もろいけれど、このように大切にお扱いくださるのを聞くのは嬉しいことだった。どのようなことをして、かえってお尋ね申し上げられようか〔いや控えよう〕、ただ御方〔明石の君〕のお側の人々に、乳母をはじめとして、世にないほどの色合いの品々を心を込めて用意して、お贈り申し上げなさった。

「待ち遠しく思うのも、ますます仰々しいことになるだろう」とお思いになるにつけても、気の毒なので、年の内に忍んで〔大堰へ〕お渡りになった。

ますます寂しい住まいで、朝夕の世話の種〔姫君〕までも離れてしまい、〔明石の君が〕どのように思うだろうかと心苦しいので、お文なども絶え間なくお遣わしになる。

女君〔明石の君〕も、今は特別に恨み申し上げなさらず、可愛い人〔姫君〕のために罪をお許し申し上げていらした。

年も改まった。うららかな空のもと、〔源氏の〕思い悩むことのないご様子は、ますますめでたく、磨き改めたお召し物で参集なさっている人々のうち、身分のある年長者は、七日まで新年のお祝いなどを申し上げなさるのを、〔源氏が〕お連れになっていらした。

若い人々は、何となく気持ちよさそうにお見えになる。次々の人々も、心の内では思うこともあるだろうが、表面は誇らしげに見える頃合いであることよ。

東の院の対の御方〔花散里〕も、様子は好ましく理想的なほどで、お仕えする人々や童女の姿なども、気を許さず心遣いをしながらお過ごしになるところ、〔源氏が〕近くにいらっしゃるしるしは格別で、のどかなお暇の合間などには、ふと這い渡りなどなさるけれど、夜お泊まりになるなどというように、わざとらしくはお見えにならない。

ただご気性が穏やかで物静かで、「これほどの宿世であった身なのであろう」と思いなだめながら、得がたいほど安心してのどかにいらっしゃるので、折々のご待遇なども、こちらの御方〔紫の上〕のご様子に劣る違いを格別なくおもてなしなさって、侮り申し上げるはずもないので、同じように人々が参ってお仕え申し上げ、別当どもも仕事を怠らず、かえって乱れたところなく、見ていて安心なご様子である。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第19冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。