ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第19帖 薄雲 / 第7場面

太政大臣の死、天変のしるし

あらすじ・人物・読み方

政の重しであった太政大臣が亡くなり、朝廷も世の人も深く嘆く。若い冷泉帝には確かな後見がなく、譲位の本意を遂げられないことを口惜しく思う。その年は天変や異変の前兆がしきりに現れ、源氏だけが心のうちに煩わしく思い知ることがある。

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現代語で読む

そのころ、太政大臣がお亡くなりになった。世の重しでいらした方なので、朝廷でもお嘆きになる。しばらく〔病で〕お籠もりになっていた間でさえ、天下の騒ぎであったのだから、まして〔亡くなっては〕悲しいと思う人が多かった。源氏の大臣も、たいそう残念で、万事をお譲り申し上げてこそ、自分の暇もあったのにと〔思い〕、心細く、政務も繁くなるだろうとお思いになって、嘆いていらっしゃる。

帝〔冷泉帝〕は、ご年齢のわりに格別に大人らしく成長なさって、世の政務も、〔人々が帝について〕心配申し上げるはずのものではないけれど、また格別に後見なさるべき人もいないのを、「誰に〔位を〕譲れば、静かに暮らすという本意がかなうだろう」とお思いになると、たいそう物足りなく残念である。

〔太政大臣の〕後のお弔いなどでも、〔冷泉帝は太政大臣の〕ご子息やお孫たち以上に、細やかにお弔いし、お世話なさったのだった。

その年は、おおかた世の中が騒がしくて、朝廷方面にも、異変の前兆がしきりに現れ、穏やかでなくて、

「大空にも、例と異なる月や日や星の光が見え、雲の様子がある」

とばかり、世の人が驚くことが多くて、諸道の専門家たちが勘文を差し上げる中にも、怪しく世に尋常でないことどもが混じっていた。内大臣〔源氏〕だけが、お心のうちに、煩わしく思い知られることがあったのだった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第19冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。