ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第20帖 朝顔 / 第11場面

雪の夕暮の物語

あらすじ・人物・読み方

雪の夕暮、二条院では御簾を巻き上げ、童女たちが雪をまろばす。源氏は中宮の御前の雪の山の昔を語り、藤壺の面影を偲び、前斎院と尚侍の君の心ばへを比べ、女君と昔今の物語に夜を更かす。

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現代語で読む

雪がひどく降り積もった上に、今も散りながら、松と竹の区別が趣あって見える夕暮に、人のご容貌も光が増して見える。

「折々につけても、人の心を移すらしい花や紅葉の盛りよりも、冬の夜の澄んだ月に、雪の光と合った空こそ、不思議に、色のないもので、身にしみて、この世のほかのことまで思い流され、面白さもあはれさも、残らない折です。興ざめな例に言い置いた人の心の浅さよ」と言って、御簾を巻き上げさせなさる。

月は隈なく出て、一色に見え渡っているのに、しおれた前栽の蔭が心苦しく、遣水もたいそうひどくむせび、池の氷も言いようもなくすごいので、童女を下ろして、雪まろばしをさせなさる。

趣のある姿や頭つきが、月に映えて、大柄に馴れたものが、さまざまの衵を乱れ着て、帯も締まりのない宿直姿で、優美なのに、格別に余った髪の末が、白い〔雪〕にはまして映えたのが、たいそうはっきりしている。

小さい者は、子供らしく喜び走る拍子に、扇なども落として、くつろいだ顔が趣がある。

たいそうたくさん〔雪玉を〕転がそうと、膨らませるけれど、押し動かすこともできずに困っているようである。一方は、東の端などに出て座って、心もとなげに笑う。

「一昨年、中宮の御前に雪の山が作られたのは、世に古いことだけれど、やはり珍しくもはかないことをなさったものだなあ。何の折々につけても、残念で飽きないことでもあるかな。たいそう遠慮深くおもてなしなさって、詳しいご様子を見慣れ申し上げたことはなかったけれど、お交わりのほどに、心安いものとはお思いでしたよ。

お頼み申し上げて、あれこれの折につけて、何事も申し上げ通っていたのに、表に出てしっかりとしたこともお見えにならなかったけれど、言い甲斐があり、思うままに、はかない行いをもなさったことよ。世にまた、あれほどの類があろうか。柔らかく怯えたようでありながら、深く風流なところが、並びなくいらしたのを、あなたこそは、そうはいっても、紫の縁で、格別でなくいらっしゃるようだけれど、少しわずらわしい気が添って、角々しさが進みなさっているのが、苦しいでしょう。前斎院のご心ばへは、また格別に見えます。もの足りない時に、何とはなくとも申し上げ合わせ、私も心遣いさせられるべきあたりは、ただこの一所だけ、世に残られていらっしゃるのでしょうか」とおっしゃる。

「尚侍こそは、しっかりとして由緒正しい方は、人にまさっていらっしゃいました。浅はかな筋など、かけ離れていらした人のご心を、不思議でもあったことどもですこと」とおっしゃると、「そのとおり。優美で容貌のよい女の例には、やはり引き出すべき人ですよ。そう思うにつけ、お気の毒で悔しいことの多いことよ。まして、戯れ好きな人が、年を重ねてゆくままに、どれほど悔しいことが多いだろう。人よりは格別な静けさ、と思ったことさえ」などと、おっしゃい出して、尚侍の君のごことにも、涙を少しは落としなさった。

「この、数にも入らず貶めなさる山里の人こそは、身のほどにはやや過ぎて、物の心など得てはいるでしょうけれど、人より格別であるべきものなので、思い上がった様子をも、見過ごしておりますことよ。言い甲斐のない身分の人はまだ見ません。人は、優れた者は、難しい世であることよ。東の院で眺める人の心ばへこそ、古風で可愛らしい。とはいえ、まったくあり得ないものを、その方につけての心づかいを、人にとって見初めた時から、同じように世を慎ましげに思って過ぎてきたことよ。今はまた、お互いに背くこともできず、深くあはれと思っております」などと、昔今のご物語に夜が更けてゆく。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第20冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。