ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第20帖 朝顔 / 第12場面

藤壺の夢

あらすじ・人物・読み方

月明かりに女君が氷の歌を詠み、源氏が鴛鴦の歌で応じる。その夜、源氏は夢に現れた藤壺の宮の恨み言に襲われるような心地で目覚め、涙を流す。女君も短い夢を嘆き、源氏は亡き人を慕う歌を詠んで帖を閉じる。

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現代語で読む

月はますます澄んで、静かに趣がある。女君は、氷が閉ざして石の間の水は行き悩み、空に澄む月の影だけが流れている。

外を見やって、少し傾きなさっているほどは、似るものもなく美しい。髪の挿し方や顔立ちが、恋い申し上げる人〔藤壺〕の面影にふと思い出されて、素晴らしいので、少し分けるお心も取り重ねてしまいそうである。鴛鴦の鳴いたのに〔応じて〕、掻き集めて昔の恋しい雪の夜に、あはれを添える鴛鴦の浮き寝であることよ。

お入りになっても、宮〔藤壺〕のごことを思いながらお休みになっていると、夢ともなくほのかに拝見する、たいそうお恨みになっているご様子で、「漏らすまいとおっしゃいましたが、情けない噂の隠れ場所もありませんでしたので、恥ずかしく、辛い目を見るにつけても、つらいことです」とおっしゃる。お返事を申し上げようとお思いになると、襲われる心地がして、女君の、

「これは、どうして、このような」とおっしゃるのに、驚いて、たいそう残念で、胸の収まりがなく騒ぐので、抑えて、涙も流れ出てしまった。今も、たいそう〔枕を〕濡らし添えなさる。

女君は、どのようなことかとお思いになるのに、身じろぎもなさらずにお臥しになっていた。

解けて寝た寝覚めの寂しい冬の夜に、むすぼおれてしまった夢の短いことよ。かえって物足りなく、悲しいとお思いになると、早くお起きになって、さっとした様子もなく、あちこちに御誦経などをさせなさる。

「辛い目をお見せになると、恨みなさるのも、さぞお思いになることでしょう。勤行をなさり、何かと罪の軽そうだったご様子ながら、この一つのことで、この世の濁りを濯ぎなさらないのだろう」と、物の心を深く思い辿るにつけ、たいそう悲しいので、「何をして、知る人のない世界にいらっしゃるのだろうかを、お訪ね申し上げに参上して、罪にも代わり申し上げたい」などと、つくづくお思いになる。

「あの方のために、取り立てて何の行いをもなさるのは、人が咎め申し上げそうである。宮中でも、お心の鬼にお思いになるところがあるだろうか」と、思い包むうちに、阿弥陀仏を心にかけてお念じ申し上げなさる。「同じ蓮の上に〔生まれたい〕」とこそは、

亡き人を慕う心に任せても、影も見えない三つの瀬に迷うことでしょうか。とお思いになるのが、悲しかったことよ。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第20冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。