源氏物語 第20帖
朝顔 あさがお
あらすじ
賀茂の斎院を下りた朝顔の姫君に、源氏は昔と変わらぬ執心を寄せ、姫君の移り住む桃園宮の女五の宮を訪ねて対面を果たす。神の許しを待つ間に年月を過ごしたという姫君の心は固く、朝顔の花に寄せた贈答を交わしても思いは届かない。源氏の度重なる参上は二条院の女君の心を乱し、雪の夜の物語の果てに、源氏は夢に現れた亡き藤壺の恨み言に涙する。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面斎院の御下り賀茂の斎院を下りた朝顔の姫君に、源氏は昔から絶えぬ執心でしきりに文を送るが、姫君はわづらはしく思って心を許さない。長月、姫君が桃園宮の女五の宮のもとへ移ったと聞き、源氏は女五の宮を訪ねる口実で参上する。第2場面女五の宮との昔語り源氏は女五の宮と対面し、老いてしはぶきがちな宮と、桐壺院の御代の昔を語り合って涙ぐむ。宮が三の宮をうらやむ言葉に、源氏はふと耳をとめ、御簾の向こうの姫君のありさまを思いやる。第3場面斎院との対面源氏は南の廂に通され、御簾越しに朝顔の姫君と対面する。神の許しを待つ間に年月を過ごしたという姫君の歌に、源氏は誓いをいさめる神はいまいと応じるが、姫君の心は深く閉ざしたままで、源氏は嘆いて退出する。第4場面朝顔の花と返歌帰邸した源氏は夜も寝覚めがちに姫君を思い続け、朝霧の中に咲く朝顔の花を折って文に添えて送る。姫君からは、秋の果てに霧の籬にむすぼほれる朝顔に自らをよそへた返歌が届き、源氏はその文を置きがたく眺める。第5場面噂と対の上の嘆き源氏と斎院のことは世間に漏れ聞こえ、二条院の対の上(紫の上)は人知れず思い嘆く。まめやかに苦しいと思えばこそ表には出さず、源氏は端近くで眺めがちに過ごし、文を書いては姫君の気配をうかがう。
場面 第6–10場面
第6場面雪の日、五の宮をおとずれる夕方、源氏は女五の宮の病気見舞いにかこつけて二条院を訪れるが、女君は若君に紛らわせて顔も見せず、背を向けて臥してしまう。源氏はもの思いに沈みながら出て行き、女君はその艶な姿を見送って心が揺れる。第7場面桃園宮の錠源氏は人目の多い北面の門を避け、西の門から桃園宮に入ろうとするが、門守は錆びた錠をこじ開けられず、源氏は三年という歳月の移ろいを思い、庭の蓬に雪の降る歌を口ずさむ。第8場面源典侍との再会女五の宮が眠ってしまった頃、思いがけず往年の源典侍が尼姿で現れる。源氏は昔を思い出し心ときめき、親の契りを詠み交わすが、典侍の申し出を疎ましく思い、ほどなく立ち去る。第9場面斎院への言い寄り源氏は西面に残った御格子から、月明かりの雪の夜に朝顔の姫君へまめやかに言葉を責めるが、姫君の心はさらに動かない。夜更けに詠み交わした歌も、人伝てに返された姫君の返歌も、変わらぬ思いの固さを源氏に思い知らせる。第10場面女君への言い訳源氏は姫君の固い心に思いを残しながらも、二条院で夜離れを重ねることを女君に慰め言い訳する。女君は額髪を引き繕っても背を向け、源氏は雪の夕暮に昔を思いながら、日一日を慰め続ける。
場面 第11–12場面
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第20冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。