ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第20帖 朝顔 / 第4場面

朝顔の花と返歌

あらすじ・人物・読み方

帰邸した源氏は夜も寝覚めがちに姫君を思い続け、朝霧の中に咲く朝顔の花を折って文に添えて送る。姫君からは、秋の果てに霧の籬にむすぼほれる朝顔に自らをよそへた返歌が届き、源氏はその文を置きがたく眺める。

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大方の、空も趣のある頃で、木の葉の音につけても、過ぎ去ったことのあはれを取り返しながら、その折々に、をかしくもあはれにも、深く感じられた〔姫君の〕ご心ばへなども、〔源氏は女君に〕思い出してお話し申し上げる。

〔対面の折は〕気がかりでお立ちになったが、〔帰ってからは〕まして、寝覚めがちに思い続けなさる。早く御格子を上げさせなさって、朝霧を眺めなさる。枯れた花々の中に、朝顔があれこれに這いまとわりついて、あるか無いかというふうに咲いて、色艶も格別に変わっているのを、折らせなさって〔姫君へ〕お送りになる。

「はっきりとしたおもてなしに、不快な心地がいたしまして、後ろでもますますどうご覧になっただろうかと、妬ましく思われます。それでも、お目にかかった折のことが露ほども忘れられない朝顔の花の盛りは、過ぎてしまったことでしょう。長年の思いの積もりも、あはれとばかりは、それでもお分かりになるだろうかと、思う一方では」などと〔文に〕申し上げなさった。落ち着いたご文の心ばへに、「はっきりしないのも、見知らぬふうか」とお思いになり、人々も御硯を取りまかないして、〔返事を〕申し上げると、

秋も終わって、霧の籬にむすぼほれて、あるか無いかというふうに色の移ろう朝顔です。ふさわしいお寄せ方につけても、露けく〔しっとりと悲しく〕」とだけあるのは、何の面白い節もないのに、どうしたことか、〔源氏は〕置きがたくご覧になっているようである。青鈍の紙の、しなやかな墨付きの端々も、趣あって見えるようである。人の身分は、書きぶりなどに繕われながら、その折には罪のないことも、それらしく真似て書くには、大きくゆがむこともあるようだからこそ、わざと書き紛らわしながら、はっきりしないことも多かったのである。

立ち返って、今さら若々しいご文書きなども、ふさわしくないこと、とはお思いになるが、やはりこのように昔と変わらぬご様子ながら、残念に過ごしてしまったことを思いつつ、やめられそうになくお思いになるので、さらに重ねて、まじめに申し上げなさる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第20冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。