ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第20帖 朝顔 / 第9場面

斎院への言い寄り

あらすじ・人物・読み方

源氏は西面に残った御格子から、月明かりの雪の夜に朝顔の姫君へまめやかに言葉を責めるが、姫君の心はさらに動かない。夜更けに詠み交わした歌も、人伝てに返された姫君の返歌も、変わらぬ思いの固さを源氏に思い知らせる。

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現代語で読む

西面には御格子は下ろしてあるけれど、〔姫君が源氏を〕厭い申し上げるような顔つきもどうかと思って、一間、二間は下ろさないでいる。月が出て、薄く積もった雪の光と合って、かえってたいそう面白い夜の様子である。

「さっきの老いらくの心づもりも、良くないものの世の例とか聞いた」と思い出されて、おかしいことである。今宵は、たいそうまじめに申し上げなさって、「一言、憎いなどとも、人伝てでなくおっしゃせてくださるなら、思い絶えるよすがにもいたしましょう」と、身を乗り出して責め申し上げなさるけれど、

「昔、私も人も若々しく、罪が許されていた世でさえ、亡き宮〔式部卿宮〕などが心を寄せお思いだったのを、やはりあってはならないと恥ずかしく思い申し上げてやめましたのに、世の末に、年を重ね、似つかわしくない身のほどで、一声もたいそうまばゆいことでしょう」とお思いになって、まったく動くことのないご心なので、〔源氏は〕「情けなく、つらい」と思い申し上げなさる。

さすがに、みっともなく突き放したりはしない人伝てのお返事などが、心苦しいことよ。夜もひどく更けてゆくのに、風の様子が激しくて、本当にたいそうもの心細く思われるので、程よい頃合いを、押し拭いなさって、つれなさに昔懲りもしない私の心こそ、あなたのつらさに加えて、つらいことです。自分の心からのものです」とおっしゃい捨てなさるのを、「なるほど」「傍ら痛いこと」と、人々が、例によって、聞こえている。

改めて何が見えましょう、人の身の上に。かねて聞いていた心変わりというものを。昔と変わることは、できないものです」などと〔人伝てに〕申し上げなさった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第20冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。