ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第21帖 少女 / 第20場面

朱雀院の行幸、鴬の贈答

あらすじ・人物・読み方

如月、朱雀院へ行幸があり、桜のもとで詩の試みや舞楽が催される。夕霧は苦しい学問の道を恨めしく思う。花の宴の昔を思い出す院に源氏が鴬の歌を贈り、院、帥の宮、冷泉帝と笛と鴬をめぐる贈答が交わされる。

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現代語で読む

元日にも、大殿〔源氏〕は御外出をなさらないので、のどかにおいでになる。良房の大臣と聞こえた昔の例にならって、白馬を引く節会の日に、内裏の儀式を移して、昔の例よりも事を加えて、厳かな御様子である。

二月の二十日過ぎ、朱雀院へ行幸がある。花盛りはまだ早い頃だけれど、三月は故宮〔桐壺帝〕の御忌月である。早く開いた桜の色もたいそう趣があるので、院〔朱雀院〕でも御用意を格別に整え磨かせなさり、行幸にお仕え申し上げる上達部や親王たちをはじめ、心遣いをなさっていた。

人々はみな、青色に、桜襲をお着けになる。帝〔冷泉帝〕は、赤色の御衣を奉られている。お召しがあって、太政大臣〔源氏〕が参上なさる。同じ赤色をお着けになっているので、いよいよ一つのもののように輝いて見間違えなさるほどである。人々の装束や用意は、常とは異なっている。院〔朱雀院〕も、たいそう清らかに年を重ねてまさっておいでで、御様子の用意は、優美な方へ進んでおいでになった。

今日は、わざわざ文人もお召しにならず、ただその才能が賢いと聞こえた学生十人を召す。式部の司の試験の題にならって、御題を賜る。大殿の太郎君〔夕霧〕がお受けになるはずであるらしい。気後れする者どもは、何も覚えず、繋がれていない舟に乗って池に放れ出て、たいそうなすすべもない様子である。

日が次第に傾いて、楽の舟どもが漕ぎ回って、調子を奏する頃の、山風の響きが趣深く吹き合わせているのに、冠者の君〔夕霧〕は、

「このように苦しい道でなくても交じらって遊べるはずなのに」

と、世の中を恨めしくお思いになっていた。

「春鴬囀」を舞う頃に、昔の花の宴の頃をお思い出しになって、院の帝〔朱雀帝〕も、

「また、あれほどのことを見ることができるだろうか」

とおっしゃるにつけて、その世のことをあわれにお思い続けになる。舞い終わる頃に、大臣〔源氏〕が、院に御土器をお差し上げなさる。

鴬のさえずる声は昔のままですが、親しんだ花の蔭〔人々のありさま〕は変わってしまいました。

院の上〔朱雀帝〕は、

九重〔宮中〕を霞が隔てる住まい〔朱雀院〕にも、春が来たと告げてくる鴬の声よ。

帥の宮と聞こえた方が、今は兵部卿宮として、今の上〔冷泉帝〕に御土器をお差し上げなさる。

昔を吹き伝えてきた笛竹に、さえずる鳥の音までも変わらないことです。

鮮やかに奏しお作りになっているのは、用意が格別に見事である。〔冷泉帝が笛を〕お取りになって、

鴬が昔を恋しがってさえずるのは、木を伝う花の色が褪せてしまったからでしょうか。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第21冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。