第21帖 少女 / 第23場面
紅葉の贈答、明石の君の上京
あらすじ・人物・読み方
長月、秋好中宮から紅葉を盛った箱の蓋に歌を添えた消息が届き、源氏は岩根の松の細工に歌で返す。六条院への移転が定まる中、大堰の明石の君も神無月に渡ってくる。
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現代語で読む
九月になると、紅葉が所々色づいて、宮〔中宮〕の御前へも言わずもがな趣深い。風が吹いている夕暮に、御箱の蓋に、色々の花や紅葉をこき混ぜて、こちら〔源氏のもと〕へ差し上げなさった。
大柄な童女が、濃い衵に、紫苑の織物を重ねて、赤朽葉の羅の汗衫を〔着て〕、たいそうひどく慣れた様子で、廊や渡殿の反橋を渡って参る。整った儀式だけれど、童女の愛らしさを、〔源氏は〕お見捨てになることができなかった。そのような所に伺候し慣れているので、振る舞いや様子が、他の者には似ず、好ましく趣がある。御消息には、
心から春を待つ園である私の宿の紅葉を、風のつてにでもご覧ください。
若い人々が、御使いを囃し立てる様子どもが趣がある。
御返しは、この御箱の蓋に苔を敷き、巌などの趣向をして、五葉の枝に〔歌を結んで〕、
風に散る紅葉は軽いものです。春の色〔花〕を、岩根の松にかけてこそ見ましょう。
この岩根の松も、細かに見れば、言いようもなく見事な作り物どもであった。とりあえず思い寄りなさった由緒ゆかしさなどを、趣深く御覧になる。御前にいる人々も褒め合っている。大臣〔源氏〕は、
「この紅葉の御消息は、たいそう妬ましそうです。春の花盛りに、この御返事は申し上げなさい。この頃に紅葉を言い古すのは、龍田姫が思うこともあるので、差し退いて、花の蔭に立ち隠れてこそ、強いことが出てくるでしょう」
と申し上げなさるのも、たいそう若やかで尽きない御様子の見どころが多い上に、いよいよ思うようである御住まい〔六条院〕で、申し通わし合っておいでになる。
大堰の御方〔明石の君〕は、「このように方々の御移転が定まって、数ならぬ人は、いつとなく紛れてしまおう」とお思いになって、十月にお渡りになった。御しつらいは、ことの様子に劣ることなくして、お渡し申し上げなさる。姫君の御ためをお思いになるので、大方の作法も、区別がこの上なく、たいそう重々しくおもてなしさせなさっていた。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第21冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。