ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第22帖 玉鬘 / 第1場面

忘れえぬ夕顔

あらすじ・人物・読み方

源氏は亡き夕顔を忘れられず、形見の右近を紫の上のもとに置いて古人の数に加える。右近は、夕顔の娘が四歳の年に乳母の夫少弐に伴われて筑紫へ下ったまま行方知れずとなった経緯を胸に秘めている。

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年月が隔たっても、飽きることのなかった夕顔を、少しもお忘れにならず、さまざまに違う人々の有様を重ねてご覧になるにつけても、「〔夕顔が〕生きていてくれたら」と、しみじみと残念にばかり思い出しなさる。右近は、何の人数でもないけれど、それでも〔源氏は〕その形見とご覧になって、可愛い者とお思いなので、古参の女房の数に入ってお仕えし慣れている。須磨へのご移転の折に、対の上〔紫の上〕のお方へ、〔源氏の〕人々が皆お渡し申し上げた時から、そちらにお仕えしている。物静かで感じのよい者と、女君〔紫の上〕もお思いだけれど、心のうちでは、

「亡き君〔夕顔〕がご存命でしたら、明石のお方ほどのご寵愛に劣りなさらなかったでしょう。それほど深いご愛情がなかった方でさえ、見捨てず取り立ててお世話なさる〔源氏の〕お心の長いご情けですから、まして、身分の高い列ではなかったにせよ、このご邸のお移りの顔ぶれの中には〔夕顔も〕交じっていらしたでしょうに」と思うと、〔右近は〕飽きることなく悲しく思っていた。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第22冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。