第21帖 少女 / 第6場面
女御の座をめぐる争い
あらすじ・人物・読み方
斎宮女御を后に立てようとする源氏の動きに世間は反発し、弘徽殿方など各派が後見を理由に争うが、結局は梅壺の斎宮女御が后に立つ。源氏は太政大臣に上がり政務を譲り、頭中将は内大臣となって栄え、その娘雲居雁は大宮に預けられる。
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現代語で読む
こうして、〔斎宮女御が〕后にお立ちになるはずであるのに、
「斎宮女御〔秋好中宮〕こそは、母宮も、後見として〔源氏に〕お譲り申し上げなさったのだから」
と、大臣〔源氏〕も言い訳なさる。〔けれども〕源氏がしきりに〔斎宮女御を〕后にお立てしようとすることを、世の人はお許し申し上げない。
「弘徽殿〔の女御〕が、まず人より先に入内なさったのに、〔後から后にするのは〕どうしたことか」
などと、内々に、あちらこちらに心を寄せ申し上げる人々が、もっともらしくなく思って申し上げる。
兵部卿宮と申し上げた方は、今は式部卿で、この御代にはますます並々ならぬご寵愛を受けておいでになる、その御娘が、本来の望みがあって入内なさった。同じように、王女御としてお仕えなさっているのを、
「どうせなら、御母方として親しくおそばにあるべき方こそを、母后のおいででない代わりの後見に〔后に〕」
と理由をつけて、ふさわしいはずだと、それぞれにお思いになって争いなさったけれど、やはり梅壺〔斎宮女御〕が〔后に〕お立ちになった。〔斎宮女御の〕ご幸運が、このように逆転して優れておいでだったことを、世の人は驚き申し上げる。
大臣〔源氏〕は、太政大臣にお上がりになって、大将〔頭中将〕は、内大臣におなりになった。〔源氏は〕世の中の政務をお譲り申し上げなさる。〔内大臣の〕人柄は、たいそう真っ直ぐで、きらきらとして、心遣いなども賢明でおいでである。学問を本業としてなさっていたので、韻塞〔詩の勝負〕ではお負けになったけれど、政務には賢明である。
〔内大臣には〕妻ごとに御子が十余人、大人になりつつおいでになるのも、次々に出世しつつ、〔どの子も〕劣らず栄えている御家の中である。娘は、女御と、もうお一方おいでだった。〔雲居雁は〕若紫の系統の腹で、高貴な血筋は劣るはずもないけれど、その母君は、按察使大納言の北の方になって、対面する子供の数が多くなって、「それに混ぜて後妻の親に譲るのは、たいそう情けない」と言って、〔内大臣が雲居雁を〕取り離し申し上げなさって、大宮にお預け申し上げなさっていた。女御にはこの上なく低く思い申し上げなさっていたけれど、〔雲居雁の〕人柄や、容貌などは、たいそう可愛らしくおいでだった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第21冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。