ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第21帖 少女 / 第7場面

引き離される夕霧と雲居雁

あらすじ・人物・読み方

幼馴染として育った夕霧と雲居雁は十歳を過ぎて部屋を分けられ、父内大臣の意向で疎遠になる。夕霧は花紅葉や雛遊びに託して思いを寄せ、二人は互いに慕い合うが、後見たちは急には引き離せないと見守り、幼い文のやり取りも見隠しにしている。

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現代語で読む

冠者の君〔夕霧〕は、〔雲居雁と〕同じ年頃に育ちお出になったけれど、それぞれ十歳を過ぎなさって後は、お部屋が別々になって、

「仲睦まじい人だけれど、男子とは打ち解けてはならないものだ」

と、父大臣〔内大臣〕が申し上げなさって、疎遠になってしまったのを、〔夕霧は〕幼い心にも思うことがないわけでもないので、はかない花や紅葉につけても、雛遊びのお世辞をも、熱心にまとわりついて歩いて、〔夕霧が〕心ざしを見せ申し上げなさるので、〔二人は〕たいそう思い交わして、はっきりとは今も恥じ申し上げなさらない。

〔二人の〕お世話係たちも、

「どうしてまあ、若いお心同士ですから、長年見慣れなさってきたお二人の間柄を、急に、どうして引き離して辱め申し上げられましょうか」

と見るにつけ、女君〔雲居雁〕こそ無心でおいでだけれど、男〔夕霧〕は、それほど何もない年頃と見え申し上げるけれど、大それたことに、どのようなお仲であったのだろう、よそよそになっては、これ〔引き離されること〕を心穏やかでなく思うに違いない。

まだ片端だけ生えた手〔の文字〕で、生え先が可愛らしく、書き交わしなさっている手紙類が、心が幼くて、自然と落ち散る折があるのを、お側の人々は、ぼんやり知っている者もあるけれど、「どうして、このようなことこそ」と、誰にも申し上げはしない。見て見ぬふりをし続けているのだろう。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第21冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。