第23帖 初音 / 第12場面
御蔭に隠れた人びとへの言葉
あらすじ・人物・読み方
源氏の御蔭に隠れて暮らす人びとは多く、源氏は皆を訪ねて、心は怠っていないと懐かしく語る。身分に応じて人をあわれむ仰々しくない心に頼り、多くの人びとが年を経てきたのだった。
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このようにしても、〔源氏の〕御蔭に隠れている人びとは多かった。〔源氏は〕皆お立ち寄りになって、
「お目にかかれない日数が重なる折々はありますが、心のうちは怠っておりません。ただ限りある道〔死別〕の別れだけが気がかりです。『命を知らない』〔という歌の心です〕」
などと、懐かしくおっしゃる。どの人をも、身分身分に応じてしみじみとお思いになっていた。自分こそはと驕り上がりそうな御身のほどであるけれど、それほど仰々しく振る舞いなさらず、場所につけ、人の身分につけて、さまざまに広く懐かしくいらっしゃるので、ただこれほどの御心に頼って、多くの人びとは年を経てきたのである。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第23冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。