第23帖 初音 / 第14場面
踏歌の翌日、後宴の誘い
あらすじ・人物・読み方
踏歌が明け終わり御方々が帰った後、源氏は日高く起きて、夕霧の声を弁の少将に劣らないと愛でる。「万春楽」を口ずさみ、集まった人びとで楽器を試す私の後宴をしようと、秘めた御琴を引き出して調えさせる。
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現代語で読む
夜が明け終わると、御方々はお帰りになった。大臣の君〔源氏〕は、少しお休みになって、日が高くなってからお起きになった。
「中将〔夕霧〕の声は、弁の少将にほとんど劣らないようだね。不思議と有職の人たちが育ち出る時分なのだね。昔の人は、本当に賢い方や優れたことも多かっただろうが、情趣を解する筋では、この頃の人に決して勝りはしなかっただろうね。中将などを、まっすぐな朝廷人に育てようと思っていたし、自分自身のたいそう戯れた頑なさを、遠ざけようと思っていたけれど、やはり内心にはほのかに風流を好む筋の心を留めているようだ。押し静めて、まっすぐな上辺ばかりは、煩わしく見えるよ」
などと、たいそう可愛らしくお思いになっていた。「万春楽」と、口ずさみにおっしゃって、
「人びとがこちらに集まっていらっしゃるついでに、どうにか楽器の音を試してみたいものだ。私の後宴をしよう」
とおっしゃって、御琴の数々を、美しい袋に入れて秘めておかせになっていたのを、皆引き出して、押し拭い、緩んでいる緒を調えさせなさったりする。御方々は、心遣いをたいそうなさりながら、心を込めた趣向を尽くしていらっしゃるのだろう。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第23冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。