ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第26帖 常夏 / 第8場面

近江の君を女御のもとへ

あらすじ・人物・読み方

北の対の今姫君・近江の君の処遇に悩む内大臣は、弘徽殿女御のもとへ行儀見習いに出すことを決め、女御に笑いながら依頼する。気品ある女御の応対に、内大臣は夕霧への評判の気の毒さをもらす。

下の同じ枠で原文・発音の読み・現代語を一節ずつ確認できます。どの読み方から始めても読了を記録できます。

表示と音声の設定

任意の復習へ

現代語で読む

大臣〔内大臣〕は、この北の対の今姫君〔近江の君〕を、「どうしよう。賢しらに迎え連れて来て。人がこう非難するからといって、返し送るのも、たいそう軽々しく、物狂わしいようだ。こうして籠めておいたので、本当に大切に育てる心があるかと、人が言いなすのも妬ましい。女御の御方などに交じらせて、その折のものにさせてしまおう。人がたいそう欠けたものに言い落とすという容貌は、果たして、そんなに言うほどだろうか」

などとお思いになって、女御の君に、「あの者をお参らせしよう。見苦しいようなことなどは、年老いて知っている女房などにさせて、憚らず言い教えさせなさってご覧なさい。若い人々の言い種には、決してお笑わせなさいますな。情けないほど軽はずみなようです」と、笑いながら申し上げなさる。

「どうして、そんなに格別なことがございましょうか。中将〔夕霧〕などが、たいそう無二に思っておりましたという先の言葉に足らないというばかりでございましょう。こんなにおっしゃり騒ぐのを、みっともなく思われるにつけても、一方では輝かしいことでしょうか」と、たいそう恥ずかしげに申し上げなさる。この御様子は、細かに趣深く騒がしくなく、たいそう高貴に澄んだものに、懐かしい様子が添って、美しい梅の花の開けかけた朝ぼらけを思わせ、余り多くほほ笑んでいらっしゃるのが、人とは異なっていた、と拝見なさる。

「中将〔夕霧〕が、たいそう言うけれども、心が若く近づきが少ないのに」などと申し上げなさるのも、気の毒なほどの人の御評判であることよ。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第26冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。