ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

源氏物語 第26帖

常夏 とこなつ

あらすじ

夏の盛り、六条院の釣殿の涼みで近江の君の噂が立つ。源氏の玉鬘への思いは煩悶を深め、内大臣は実の娘に会えぬ口惜しさを募らせる。北の対の近江の君は弘徽殿女御のもとへ出されるが、その早口と、支離滅裂な文と歌が宮中に笑いを広げていく。

この帖の人物

場面 第1–5場面

第1場面釣殿の涼みと近江の君の噂いと暑い日、源氏は東の釣殿で夕霧や親しい殿上人と涼む。内大臣家の子息たちが訪れたところで、源氏は、内大臣が他腹の娘を尋ね出してかしづいているという噂を弁少将に問いただす。尋ね出した娘は近江の君のことと知れ、源氏はほほ笑みながら痛烈な皮肉を言い、柏木を辱める。第2場面西の対の撫子夕方の涼しい風に、源氏は若君たちに送られて西の対の玉鬘のもとへ渡る。撫子が咲き乱れる前栽を眺めながら、源氏は言い寄る若君たちのこと、内大臣が中将との仲を許さないことを引き合いに、玉鬘をからかい、父に知られる日のなさを思う姫君の心中を察する。第3場面和琴の手ほどき燈籠より篝火がよいと、源氏は和琴を引き寄せて掻き鳴らし、和琴の妙を語って玉鬘に習うよう勧める。謡い、想夫恋を弾き、なお弾くよう切に勧めるが、姫君は手も触れない。御琴を口実に近寄った源氏の問いかけに、玉鬘は「身にしむ風も吹き添ふかし」と応える。第4場面撫子の贈答源氏は、撫子を大臣にも見せたいと昔の夕顔のことをほのめかし、「撫子のとこなつかしき色を見ば、もとの垣根を人や尋ねむ」と詠む。玉鬘は泣きながら「山賤の垣ほに生ひし撫子の、もとの根ざしを誰れか尋ねむ」と返し、源氏の思いはますます堪えがたくなる。第5場面源氏の煩悶源氏の玉鬘への思いは明け暮れ募るばかりで、許すべきか、据え置いて慰むべきかと思い乱れる。姫君も源氏に目馴れて打ち解けていくにつれ、源氏はなお思いを過ごし捨てることができず、心安からぬ日々が続く。

場面 第6–10場面

第6場面源氏の皮肉を聞く内大臣源氏の皮肉を聞いた内大臣は、西の対の姫君の高い評判を引き合いに出して源氏をやゆし、実の娘である玉鬘に会えない口惜しさを募らせる。源氏が丁寧に口添えしてくれれば折れようものを、男方は一向に焦らされず、内大臣の心は痛む。第7場面雲居の雁への説教内大臣はふと雲居の雁のもとへ這い渡り、昼寝の姿を諌めて、女の身の守り方、源氏の姫君教育を引き合いに説く。幼いころ無心に源氏を見た昔を思い出して胸のふさがる姫君は、大宮の恨み言もあって父のもとへ渡ることもできない。第8場面近江の君を女御のもとへ北の対の今姫君・近江の君の処遇に悩む内大臣は、弘徽殿女御のもとへ行儀見習いに出すことを決め、女御に笑いながら依頼する。気品ある女御の応対に、内大臣は夕霧への評判の気の毒さをもらす。第9場面双六と早口の近江の君簾の内を覗く内大臣は、五節の君と双六に興じる近江の君の軽はずみな様子、早口な応対に呆れながらも、その孝心に哀れを覚える。大徳の罪の報いなどと冗談を交わし、女御のもとへ参る段取りを決めて、大臣は渡って行く。第10場面近江の君の人となり大臣を見送る座で、近江の君は立派な父を自慢し、五節の君と言い合う。その鄙びた物言い、本末の合わない歌など、人となりが語られ、近江の君は女御殿へ参る話を持ち出す。

場面 第11–12場面

出典・底本

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第26冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。