第28帖 野分 / 第12場面
花散里の裁ち物と源氏
あらすじ・人物・読み方
源氏は東の御方・花散里のもとへ渡り、朝寒のくつろぎ仕事に裁ち物をする年経た女房たちと、綿をまさぐる若い女たちを見る。引き散らされた布の色々の清らかさを、南の上にも劣らないと評し、御直衣の色を褒める。中将夕霧に着せる衣の色について言葉を交わし、源氏は渡っていく。
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現代語で読む
東の御方〔花散里〕のところへ、ここからお渡りになる。今朝の朝寒のくつろぎ仕事なのか、物を裁つなどする年経た女房たちが、御前に大勢いて、細櫃のような物に綿を引きかけてまさぐる若い女たちもいる。たいそう清らかな朽葉色の薄物や、今様色のこの上なく打ち上げた物などを、引き散らしておられる。「中将の下襲か。御前の壺前栽の宴も終わってしまったのだろう。こんなに吹き散らかしてしまっては、何事もできまい。興ざめな秋になりそうだ」などとおっしゃって、何だろうか、さまざまな物の色々がたいそう清らかなので、「こうした方面は、南の上〔紫の上〕にも劣らないな」とお思いになる。御直衣は、花文の綾を、このごろ摘み出した花で、はかなく染め出しておられるのが、たいそう理想的な色をしている。
「中将にこそ、こうした色合いで着せなさるのがよいでしょう。若い人の姿として見苦しくないようです」などといったことを申し上げて、お渡りになった。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第28冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。