ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第28帖 野分 / 第4場面

夕霧の見舞いと大宮の嘆き

あらすじ・人物・読み方

夕霧は日々三条の宮と六条院を見舞い、野分の日も風の中を大宮のもとへ参る。大宮は喜んで迎えるが、長年経験したことのない嵐に震え、木の枝の折れる音や瓦の吹き散るさまを嘆く。かつての勢いが衰え、夕霧を頼みとする姿に、世の無常と内大臣の疎遠さが重なる。

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現代語で読む

〔夕霧は、〕道の途中では〔風に〕揉まれるような風ではあるが、きちんと身を整えていらっしゃる方なので、三条の宮と六条院とに参って、〔主の方々に〕お目にかからなかった日はない。宮中の御物忌などで、やむを得ず籠もらなければならない日以外は、忙しい公務や節会などで時間がかかり、行事の多い日に重なっても、まずこの邸に参って、宮〔大宮のもと〕から出発なさるのだったから、まして今日のような空模様では、風の吹く先をさまよい歩いていらっしゃるのも痛々しく見える。

宮〔大宮〕は、とても嬉しく、頼もしいと〔夕霧を〕待ち受けていらっしゃって、「長年生きてきたこの歳で、まだこんなに騒がしい野分の嵐に遭ったことはありませんでした」と、ただ震えに震えていらっしゃる。

「大きな木の枝などが折れる音も、たいそう気味が悪いです。御殿の瓦まで残らないほど〔風が〕吹き散らしているのに、こうして〔あなたが〕いらしてくださったこと〔はありがたいことです〕」と、一方ではおっしゃる。〔大宮の〕あれほど辺りをはばからせるご威勢が静まって、この君〔夕霧〕を頼りにする人と思っていらっしゃるのは、無常な世の中であることだ。今も世間一般の評判が衰えなさることはないけれど、内大臣〔息子〕のお心遣いは、かえって少し疎遠であった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第28冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。