ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第28帖 野分 / 第6場面

暁に東の御方を見舞う

あらすじ・人物・読み方

明け方に雨が降り出し、六条院の離れが倒れたと聞いた夕霧は、人手が少なく心細いであろう東の御方を案じて参上する。道中の冷たい雨のなかで自分の心に加わった新しい思いに気づき、ふさわしくないことだと自らを戒めながら、まず東の御方を慰めて修理のことを言い置き、南の御殿へ向かう。

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現代語で読む

明け方になると風が少し湿り気を帯び、にわか雨のように〔雨が〕降り出した。「六条院では、離れの建物が倒れてしまいました」などと人々が申し上げる。

「風が吹き回るほど広々として、あたり一面が高く感じられるこの院では、人々は〔お住まいの方々が〕いらっしゃる御殿の近くに集まっていただろうけれど、東の町などは人が少なく、〔東の御方は〕心細く思われただろう」と〔夕霧は〕心配になって、まだ辺りが薄明るくなり始めた頃に〔東の御方のもとへ〕参上した。

道の途中、横なぐりの雨がとても冷たく吹き込んでくる。空の様子もすさまじいので、妙に心が上の空になるような気がして、「何事なのだろう。また私の心に〔新しい〕思いが加わったのだ」と思い起こすと、「まったく釣り合わないことだったのだ。ああ、気が狂いそうだ」

と、あれこれ思いながら、まず東の御方のもとに参上すると、〔東の御方は〕ひどく怯えていらっしゃったので、言葉をかけて慰め、人を呼んで、あちこち修理すべき旨などを言い置いて、南の御殿に参上すると、まだ御格子も上げられていなかった。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第28冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。