ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第28帖 野分 / 第7場面

朝の庭と夫婦の語らい

あらすじ・人物・読み方

夕霧が南の御殿で待つなか、源氏は荒れた庭を見渡して涙ぐみ、目覚めた紫の上と、夜明けの別れを冗談めかして語らう。その後、源氏は格子を上げて夕霧に前夜の宮の様子を尋ね、宮に心を込めて仕えるよう言い聞かせ、内大臣の人柄を批評する。

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現代語で読む

〔源氏が〕お住まいの〔建物〕に面した高欄にもたれて見渡すと、山の木々までもが吹きなびかされ、枝がたくさん折れて倒れていた。草むらは言うまでもなく、桧皮や瓦、あちこちの立蔀や透垣といったものが乱れ散っていた。日がわずかに差し出たところ、憂いありげな庭の露がきらきらと光り、空はとてもものすごく一面に霧がかかっているなかで、わけもなく涙が落ちるのを、〔源氏は〕押し拭って隠し、咳払いをなさると、

「中将が咳払いをする音がする。夜はまだ深いのだろうか」と言って、〔源氏は〕お起きになるようだ。何事なのだろうか、〔紫の上に〕お話しになる声はせず、大臣が微笑んで、「昔でさえ〔人に〕知られまいとしてきた、明け方の別れではないか。今さら〔人に聞かれることに〕慣れようとしても、気恥ずかしいだろう」と言って、しばらく語らい申し上げるご様子が、とても趣深い。お女の方のお返事は聞こえないけれど、夜明け方に、こんなふうに冗談めかして申し上げる言葉の様子から、「〔お二人は〕ゆるぎないご夫婦仲なのだな」と、〔夕霧は〕聞いていた。

〔源氏が〕御格子をご自分で引き上げなさると、〔夕霧は〕そば近くにいる気恥ずかしさに、立ち退いて控えていた。「どうだったか。昨夜、宮は〔あなたを〕待って喜ばれたか」「はい、そのとおりでした。ちょっとしたことにつけても涙もろくいらっしゃるので、とてもお気の毒なことでございます」と〔夕霧が〕申し上げると、〔源氏は〕笑って、

「〔宮は〕もう長くはいらっしゃらないだろう。心を込めてお仕えして、お目にかかって差し上げよ。内大臣は、細かいことまでしてはならないほどに、嘆いていらっしゃった。〔内大臣の〕人柄は妙に華やかで、男らしい方面に偏っていて、親などへの孝行も、仰々しい形を重んじて、人を驚かせようという心があり、本当に心にしみる深いところはない人だと〔人は〕言っている。それでいて、心に屈折が多く、とても賢い人で、末の世に余るほど、才能は比べるものがなく、〔こちらが〕うんざりするほどだが。人として、このように欠点がないということは難しいことだったのだ」などとおっしゃる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第28冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。