ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第29帖 行幸 / 第10場面

源氏と内大臣の対面

あらすじ・人物・読み方

内大臣は大勢の君たちを引き連れて三条へ入る。葡萄染の指貫に桜の下襲を長く引き、華やかに整えた姿も、くつろいだ大君姿の源氏の光には及ばない。君たちや殿上人が集い、酒杯が回る。両大臣は昔を思い出して隔てなく語り合い、源氏は疎遠を恨み、内大臣は畏まって応える。ついでに源氏が玉鬘のことをほのめかすと、内大臣は涙ぐみ、雨夜の物語の判定を思い出して皆心を乱した。

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現代語で読む

君たちをたいそう大勢引き連れてお入りになる様子は、重々しく頼もしい。背丈がすらりと高くおいでなのに、体格の太さも伴って、たいそう宿徳の相で、顔つきも歩き方も、大臣と言うにふさわしくおいでである。

葡萄染の御指貫に、桜の下襲は、たいそう長く裾を引いて、ゆったりとわざとらしいお振る舞いは、ああ華やかだとお見えなのに、六条殿(源氏)は、桜の唐綺のお直衣に、今様色のお衣を引き重ねて、くつろいだ大君姿で、ますます比べるものがない。光こそ勝っておられるものの、こうしたたかに身を取り繕ったお姿と比べても、お見えではなかった。

君たちが次々に、たいそう清らかなご仲間同士で、集まっておられた。藤大納言、春宮大夫など、今は評判のご子息たちも、皆成人して出世しておられる。自然と、わざわざでもないのに、評判高く身分の高い殿上人、蔵人頭、五位の蔵人、近衛の中将・少将、弁官など、人柄も華やかであるべき十余人が集まっておられたので、厳かで、次の間の普通の人も多く、土器(酒杯)が何度も回って、皆酔いになって、それぞれ、このように幸運で人に優れておられるお姿を、物語にしていた。

大臣(内大臣)も、珍しいご対面に、昔のことを思い出されて、よそにいる時こそ、他愛ないことにつけて、競いたいお心も加わりそうなものだが、向かい合ってお話しになると、お互いにたいそうしみじみとしたことの数々を思い出しながら、例によって、隔てなく、昔今のことどもや年来のお話に、日が暮れてゆく。お土器(酒)などを勧め申し上げなさる。

「お仕えしなかったら悪かったでしょうに、召しもないのに憚られて。お聞き逃していたら、お咎めが加わったでしょう」

とおっしゃると、

「勘当は、こちら側にこそ〔理由が〕あります。お咎めと思うことが多くございます」

などと、含みを持たせておっしゃるので、このことかとお思いになると、煩わしくて、畏まった様子でおられる。

「昔から、公私のことについて、心の隔てもなく、大小のことを申し上げ承り、羽翼を並べるようにして、朝廷のご後見もお仕えしようと思っておりましたが、末の世となって、その頃思っていた本意にないようなことが、入り交じってはおりますが、内々の私事のことにこそ。

大方の志は、まったく変わることがございません。何ということもなく積もった年齢に添えて、昔のことが恋しく思われますのに、対面をいただくこともたいそう稀にしかございませんので、事に限りがあって、世間並みのお振る舞いとは思いながらも、親しい間柄ほどには、そのご威勢をも抑えなさってこそ、ご訪問もなさるだろうにと、恨めしい折々がございます」

と申し上げなさると、

「昔は、なるほど顔馴れて、不思議なほど怠惰になるまで馴れてお仕えし、心に隔てることもなくご覧入れられておりましたが、朝廷にお仕えした身際では、羽翼を並べた数にも思っておりませんで、嬉しいお引き立てをこそ、至らない身で、このような位にまで及びまして、朝廷にお仕えすることに添えても、存じ上げないことはございませんのに、年齢の積もりには、なるほど自然と緩むことばかりが、多くございました」

などと畏まっておっしゃる。

そのついでに、〔源氏は玉鬘のことを〕ほのめかし出しておられた。大臣(内大臣)は、

「たいそうしみじみと、珍しいことでもございますね」と、まず泣き出しておられて、「その頃から、どうなっただろうと尋ね思っておられたご様子は、何の機会だったでしょう、嘆きに堪えず、漏らしお聞かせになられた心地がいたします。今こうして、少し人数にもなっておりますにつけ、至らない者たちが、あちこちにつけてさまよっておりますのを、頑なにも見苦しいと見るにつけても、またそのような様子で、数々に連ねては、しみじみと思い申し上げられる折に添えても、まず思い出されます」

とおっしゃるついでに、あの昔の雨夜の物語で、いろいろと交わした親しい言葉の判定を思い出しなさって、泣いたり笑ったり、皆心を乱しておられた。

夜がたいそう更けて、それぞれお帰りになる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第29冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。