ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第30帖 藤袴 / 第12場面

蛍兵部卿宮への返歌

あらすじ・人物・読み方

玉鬘は求婚者の中で蛍兵部卿宮にだけ、霜の歌への返歌をほのかに送る。その控えめな応答に宮はかえって喜ぶ。女の心構えは玉鬘を手本とすべきだと、大臣たちも定めたという。

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〔蛍兵部卿〕宮へのお返事を、どうお思いだろうか、ほんのわずかに、

心から光に向かう葵でさえ、朝置いた霜を自分では消せないのです。

とほのかな〔返歌〕であるのを、〔宮は〕たいそう珍しいこととご覧になるうえ、〔玉鬘〕自身も心を分かってくれそうなご様子をちらりとお見せになったので、ほんのわずかではあるけれど、たいそう嬉しかった。

このように何ということもないけれど、さまざまな人々の、お詫び言も多かった。

女の心構えは、この君〔玉鬘〕を手本とすべきだと、大臣たちがお定めになったということである。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第30冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。