ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第30帖 藤袴 / 第5場面

夕霧、源氏に復命

あらすじ・人物・読み方

夕霧は源氏に復命し、玉鬘が出仕を渋る様子と、蛍兵部卿宮が熱心に言い寄せて玉鬘の心も動いているらしいことを報告する。

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「かえって口に出してしまったな」と、残念なにつけても、あの、もう少し身にしみて覚えたお気配を、これほどの物越しにでも、「ほのかに御声だけでも、どのような折に聞けるだろう」と、落ち着かず思いながら、〔源氏の〕御前に参上なさると、〔源氏は〕お出ましになって、〔玉鬘からの〕お返事などを〔夕霧から〕お聞きになる。

「この宮仕えを、〔玉鬘は〕渋っているようです。宮〔蛍兵部卿宮〕などが、熱心におっしゃる方で、たいそう心深い情愛を尽くして、言い寄って悩ませなさるので、心が休まっているのだろうと思うと、お気の毒です。

しかし、大原野の行幸で、主上を拝見なさってからは、たいそう素晴らしくいらっしゃった、と思っていらっしゃいました。若い人は、ほのかにでも拝見すれば、宮仕えの筋から離れられはしないでしょう。そう思って、このこともこのようにしたのです」

などと〔源氏が〕おっしゃると、

「それにしても、〔玉鬘の〕人柄は、どちらの面で見ても、比べようもなくいらっしゃるでしょう。中宮が、このように並ぶ者もない立場でいらっしゃり、また、弘徽殿の女御が、身分高く、評判も格別でいらっしゃるので、〔帝の〕深いお気持ちがあっても、肩を並べなさることは、難しいことでしょう。

宮〔蛍宮〕は、たいそう熱心にお思いになっているようなのに、わざわざ、そのような筋の御宮仕えでもないのに、取り違えたようなふうに〔帝が〕お心をお置きになるのも、あのようなお仲の間柄では、たいそうお気の毒に聞いております」

と、〔夕霧は〕大人びて申し上げなさる。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第30冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。