第30帖 藤袴 / 第6場面
源氏の考え方
あらすじ・人物・読み方
源氏は、鬚黒大将までもが自分を恨むと嘆き、玉鬘を引き取った事情を語る。夕霧は世間の邪推と内大臣の言葉を伝え、源氏の真意を探る。
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現代語で読む
「難しいことだ。私一人の心で決まる人のことでもないのに、大将〔鬚黒〕までもが、私を恨んでいるそうだ。すべて、このようなことの心苦しさを見過ごせず、筋の通らない人の恨みを買うのは、かえって軽々しい行いだったのだ。あの母君〔夕顔〕が、しみじみと言い残したことが忘れられなかったので、心細い山里にいると聞いたのを、あの大臣〔内大臣〕は、また、聞き入れてくださるはずもないと嘆いていたので、気の毒に思って、こうして〔こちらへ〕渡し始めたのだ。ここでこのように表立たせると、あの大臣も人らしく振る舞っていらっしゃるようだ」
と、もっともらしくおっしゃい続ける。
「人柄は、宮の御人としてたいそうよいだろう。今風で、たいそう優美な様子でいて、さすがに賢く、過ちをすまいなどとして、人との間柄もうまくいくだろう。それにまた、宮仕えにも、たいそうよく堪えられるだろう。容貌がよく、才気がある者で、公事などにも曖昧でなく、しっかりしていて、主上が常にお望みになるお心には、背くことはないだろう」
などとおっしゃる様子を〔夕霧は〕見たいと思ったので、
「長年このようにお育て申し上げてきたお心ざしを、人はひがんだふうに申すそうです。あの大臣〔内大臣〕も、そのように思い込んで、大将〔鬚黒〕が、あちら方面の縁故を頼みに様子を見せたのにも、応じたそうです」
と申し上げると、〔源氏は〕少し笑って、
「両方ともたいそう似つかわしくないことだ。やはり、宮仕えについても、お許しになって、こうだとお思いになる様子に従うべきだ。女は三つのことに従うものだというけれど、順序を違えて、自分の心に任せることは、あってはならないことだ」
とおっしゃる。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第30冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。