ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

第31帖 真木柱 / 第9場面

実家への迎えの決断

あらすじ・人物・読み方

大将は玉鬘に心を奪われて久しく籠もり、北の方の物の怪の騒ぎにも恐れて近寄ろうとしない。父の式部卿宮は娘の扱いに憤り、自邸へ迎える決断をして急に迎えを出す。北の方も世を嘆きつつ、父の言葉を受けて思い立つ。

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一夜ほどの隔たりでさえ、また新鮮に、趣が増してお感じになる様子に、ますます心を分けることもできないように思われて、心苦しいので、長く籠もっておられた。

修法などして騒いでも、御物の怪がたいそう怒って罵るのを〔大将が〕お聞きになると、「あってはならない傷もつき、恥ずかしいことが、必ずあるだろう」と、恐ろしくて近寄りなさらない。

〔北の方の〕殿へお渡りになる時も、別の方に離れて座りなさって、君達ばかりを呼び離して御覧になる。女の子が一人、十二、三歳ほどで、またその次々に、男の子が二人いらっしゃった。近頃になってからは、御仲も隔たりがちに慣れなさっていたけれど、高貴で、並ぶ方のないほど慣れ親しんでいらっしゃったので、「今はこれまで」と御覧になると、お仕えする人々も、「たいそう悲しい」と思う。

父宮〔式部卿宮〕は、お聞きになって、「今は、そのように遠ざけられて、出て行かされるというのに、それでいて、気丈に振る舞っていらっしゃるのは、とても辛く、人の笑いものになることだ。私が生きている限りは、ひたすらにまで、どうして従いくずおれていらっしゃろうか」とおっしゃって、急に御迎えがあった。

北の方は、御気分が少し平常に戻って、世の中を情けなく思い嘆いていらっしゃるところに、このように〔父宮が〕おっしゃると、「無理に踏みとどまって、人の〔私への思いが〕絶え果てる様を見届けて、思いを閉じ込めようとしても、今少し人の笑いものになるだけでしょう」などとお思い立つ。

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第31冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。